- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県湯前町
- 広報紙名 : 広報ゆのまえ 2026年1月号
■中神漱泉が記した「球磨三十三所彼岸詣(ひがんもうで)」から昭和3年の三十三観音めぐりを紹介します。
▽観音めぐり2日目
観音めぐり2日目の9月21日、午前4時に起きて朝湯で身を清め、朝食もそこそこに宿を出発しました。目指すは宿より1里(約4キロ)川下の渡(わたり)村(球磨村渡)の観音様(5番、鵜口(うのくち)観音)。暗い街道を足探りに、小石につまずきながら歩き、夜のほの白むころ、渡し船で球磨川を渡り、急な石段を登って観音堂にたどり着きました。お堂では早くも老婆がお茶の接待でもてなしました。境内から眼下を眺めれば、川下には肥薩線の渡鉄橋、川上には林から川を下る巡礼組の小舟が見え「風景絶佳云(ぜっかい)はんかたなし」と記しています。
鵜口観音を出て、再び球磨川を渡り、石をくりぬいた山門で有名な石水寺に詣でています。石水寺の境内には第7番の石室(いしむろ)観音があります。そこから下り松の観音(6番・嵯峨里(さがり)観音)、村山観音(9番)とめぐり、札所ではありませんが山江村の高寺院(たかてらいん)まで足を延ばしています。高寺院の石段を下るとき、西国巡礼姿の一団10人くらいとすれ違っています。続けて合戦峰(かしのみね)観音(12番)に参拝。庭の両脇には柿売りと栗売りが並んでいました。
▽人吉町から廻り観音まで
そこから人吉町へ入る往還では人馬の往来も激しくなり、幾(いく)曲がりして、九日町の観音院(10番・瀬原観音)に到着しました。正午と思しき頃、新馬場のあたりで昼食をとり「食前のビールにほろ酔えば」と記しているので、ビールも飲んでいるようです。そのまま足どり軽やかに、近道と聞いてきび畑・麻畑の道を通り抜けて、願成寺に着きました。ここには第1番清水(きよみず)観音があります。
それよりさらに観音寺観音(13番)、十島(としま)観音(14番)に参拝。ここからは相良村にある柳瀬・深水の2か所という老人の言葉にいささか元気づいて歩き続けます。田の中、畑の中の細道、蒸し暑い道のりを経て柳瀬の観音(第15番・蓑毛観音)、深水観音(16番)に参拝。ここで終わらずに、さらに川辺川を舟で渡り、上園(うえんそん)観音(17番)、廻(めぐ)り観音(18番)まで歩いています。廻り観音では再び川辺川を、子どもが綱をたぐる舟で渡っています。廻り観音での参拝を終えて戻り舟に乗り、午後4時ごろ川岸近くの農家に泊まらせてもらい、2日目の行程を終えました。
教育課学芸員 松村祥志(しょうじ)
