- 発行日 :
- 自治体名 : 大分県日田市
- 広報紙名 : 広報ひた 令和7年12月号
■障害者週間特集(しょうがいしゃしゅうかんとくしゅう)目(め)が不自由(ふじゆう)な人(ひと)に情報(じょうほう)を届(とど)ける ボランティア団体(だんたい)の取組(とりくみ)をご紹介(しょうかい)します
▽声(こえ)の広報(こうほう)「かたつむりの会(かい)」
かたつむりの会 新川会長
「広報ひた」と「社協だより」を音訳し、カセットテープに録音して情報を届ける。この活動を続けて、30年以上。当初は「日田すいめいライオンズクラブ」の盲人福祉事業だったが、平成7年に独立し、「かたつむりの会」として再スタートを切った。会の名称には、“ゆっくり、のんびり、自分たちのペースで”という意味が込められている。
「今は7人で活動しています。多少の入れ替わりはあったものの、顔ぶれはほとんど変わっていません。30年前は40代だったメンバーも、いまや70代後半。最年長は94歳です。みんなそれぞれ体調や家庭の事情があるから、できる人ができるときにやれば良いという考えで続けています」。こう話すのは、会長の新川さん。
メンバーが集まるのは、毎月1~2回。みんなでテーブルを囲み、ページの担当決めをしたら、練習なしのぶっつけ本番で、見開き1ページずつマイクに向かって声を入れていく。音読を担当する人以外は、読み間違えのチェックとラジカセの操作を行う。音声を聴く利用者も高齢のため、30年経った今なお、使い慣れたラジカセとカセットテープを使い続けている。
録音中でも雰囲気は、とってもなごやか。音読はアナウンサーのような口調ではなく、メンバーそれぞれの個性が光る。言い間違えたときも録音は止めず、言い直しやメンバー同士の会話も収録。音読の最後は、一人ひとりの「担当は、〇〇でした!」がお決まりだ。まるでラジオを聴いているかのようなこの親しみやすさが、利用者にウケているという。音読を交代しながら、1冊分を1つのカセットテープに収録。ここまでで、半日がかりの作業だ。その後、ダビング(複製)をし、郵送で10人の利用者に届けられる。
「気張らず、自分たちらしく続けてこられたのは、このテープを毎月楽しみに待ってくれている人がいるからです。メンバーの平均年齢も80歳近くなってきましたが、この活動が生きがいであり、健康維持にもつながっています。
体調が続く限り、この“声の広報”で情報を届けていきたいですね。会員は随時募集中です」と、新川さん。
▽点字(てんじ)の広報(こうほう)「たんぽぽの会(かい)」
たんぽぽの会 宗(そう)代表
平成15年発足の「たんぽぽの会」。日田市社会福祉協議会の点字講座(受講無料)を修了した人で構成され、現在は15人で活動している。「広報ひた」をはじめ、「社協だより」「パトリアニュース」、市が広く配付するチラシやパンフレット、選挙公報、ごみ収集日程表、ハザードマップなど、点字翻訳する媒体は多岐にわたる。
「私自身、定年退職後に、社協の点字講座を30回受講して、点字を習得しました。それまでは点字の知識は一切なかったんですよ」と話すのは、代表を務めている宗さん。
点字翻訳では、ひらがな、カタカナ、漢字の区別がなく、全てカタカナで表記される。そのため、原文を下読みしてカタカナに変換する作業が必要だ。読み方が分からないものは辞書を引き、人や地域の名前といった固有名詞はインターネットで調べ、それでも曖昧な場合は関係各所に問い合わせて“正確な情報”を届けることを徹底している。
会員の一人は、「橋の読み方ひとつでも、「〇〇ばし」「〇〇はし」と濁点が付くものと付かないものがあり、現地まで足を運び、橋に設置されている橋名板を確認することもあります」と、その苦労を語る。
近年、各方面から発信される情報は、絵や図、グラフ、写真、動画などの視覚的な表現を多用する傾向にある。このような情報も文章で要約し、下読みしてカタカナへ、さらに点字へと訳すため、全28ページの「広報ひた」を点訳した場合、およそ4倍の100ページにも及ぶという。
まずはページごとに担当を決め、各々が点訳したものを持ち寄り、内容の正確性や誤字・脱字等をチェック。その後、点字出力機での印刷に、製本・封入・発送作業を行う。こうして完成した点訳版は、郵送で利用者に届けられるほか、市役所・淡窓図書館・JR日田駅にも設置されている。
「外国語に翻訳されたチラシやパンフレットを目にすることはあっても、点字の媒体はごくわずかです。だからこそ、要望があれば可能な限り応えたいと、これまで小説や落語、川柳なども点訳してきました。今後も、視覚障がいをお持ちの方に、情報と楽しみを届けていきたいです」と、宗さん。
問合せ:福祉支援課障害福祉係
【電話】22-8290【FAX】22-8258(市役所1階)
