くらし ぬくもり人権シリーズ No,110

■「わが子」を想う
本市の人権啓発の取り組みとして、12月14日にクランツたけたで「破戒」を上映しました。この映画は、島崎藤村の同タイトルの小説を映像化したもので、被差別部落に生まれた主人公・瀬川丑松(せがわうしまつ)が、父のある戒めを守り成人し、小学校の教員となったが、自身の葛藤を経て、遂に父の戒めを破り、出自を明かす内容です。
その父の戒めとは「丑松よ、隠せ」「おまえがあの町で生まれ育ったということを誰にも知られてはならんぞ」「忘れるな。これが我々にとって唯一の、立身出世の方法なんだ」と身分に対する偏見から我が子丑松を守ろうとしたものです。しかし丑松は、子どもに「みなさんがおうちへ帰りましたら、お父さん、お母さんに私のことを話してください。―私は穢多です。不浄な人間です。すみません」と自ら部落の出身であることを明らかにします。そして教員を辞めて旅立つ日「いまの僕は、鳥のように自由だ」と言って前に進みます。
次に、詩人・丸岡忠雄さんの詩集を紹介します。丸岡さんは長男の誕生の日に、被差別地区に生きる自身の願いを込めて「ふるさと」という詩を詠みます。

「ふるさとをかくす」ことを父は けもののような鋭さで覚えた
「ふるさとをかくす」ことを母は 氷のような冷たさで覚えた
「ふるさとをあばかれ」ふたたび かえらぬ友がいた
「ふるさとを告白し」許婚者に さられた友がいた
わが子よ おまえには 胸張って ふるさとを名のらせたい
瞳をあげ 何のためらいもなく これが私のふるさとです と名のらせたい

「ふるさと」とは、誰もが思いだしたい、誰もが話したい、誰もが帰りたい大切なところではないでしょうか。
小説「破戒」・詩集「ふるさと」は、謂れなき部落差別です。今も存在します。差別は「してはならないもの」ではなく「あってはならない」ものです。ぜひこの機会に、今も残る部落差別問題について、家族で考えてみませんか。

問合せ:生涯学習課
【電話】63-4817