- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年5月号
~急に起こるおなかの痛みについて~
急におなかが痛くなり、緊急手術を必要とする可能性が高い状態を急性腹症と呼びます。急性腹症は救急外来を受診する患者の5~10パーセントを占めるとされ、比較的多い病気です。その中の20パーセント前後が重症で手術が必要となり、0.5パーセント未満が死亡するとされています。症状が出たあとの対応の遅れが重症化、死亡率の増加につながりますので、なるべく早く医療機関を受診して早期に診断し、治療を開始することが重要です。
急性腹症の中で多い病気として、急性虫垂炎、胆石発作、急性胆のう炎、腸閉塞(へいそく)、尿管結石、急性胃炎、胃・十二指腸潰瘍穿孔(せんこう)、急性胃腸炎、急性すい炎、大腸憩室炎、子宮外妊娠、卵巣茎捻転などが挙げられます。
急性虫垂炎は、右下腹部の盲腸にぶら下がった虫垂という小さな臓器が化膿(かのう)する病気です。右下腹部の痛みが徐々に強くなり、ひどくなると歩くだけでも激痛を伴うようになります。痛みが急激に悪化する場合は手術が必要となります。
胆石発作や急性胆のう炎は、胆のうにできた胆石が胆のうの出口にはまり起こる病気です。正常の胆のうは食後に収縮して胆のう内の胆汁を胆管から十二指腸に排出します。しかし胆のうの出口が詰まると収縮時に胆のう内圧が高まり右上腹部が痛くなります。右背中や右肩甲骨付近が痛くなることもあります。胆のうが化膿すると急性胆のう炎となり胆のうを切除する必要があります。
腸閉塞は過去の手術で生じた癒着による腸管の屈曲やねじれ、腸管の腫瘍、大量の便などが原因となって腸管の通過がさまたげられる病気です。病変部の上流の腸管がパンパンに拡張し、腹部全体の痛み、吐き気や嘔吐が起こります。腸が詰まるのでおならや排便も止まります。治療は絶食、輸液、減圧などの治療で改善しない場合は手術を必要とする場合もあります。
尿管結石は腎結石が尿管に落ちてひっかかる病気です。突然に横腹から背中にかけて激痛が起こり、吐き気や血尿を伴うこともあります。尿管の石がぼうこうに落ちるまで痛みが続きます。早くぼうこうに落ちるような注射、内服、痛み止めの座薬で治療しますが、泌尿器科での専門的な治療を要する場合もあります。
その他、胃・十二指腸潰瘍穿孔、子宮外妊娠、卵巣茎捻転なども緊急手術を要する病気です。
強い腹痛がある場合は、ウイルス・細菌感染、アニサキスという寄生虫、暴飲暴食によるものもありますが、手術を要する場合もありますので、早めの受診をお勧めします。
今月のドクター:指宿医師会 生駒 明(いこまあきら)
問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820