- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県霧島市
- 広報紙名 : 広報きりしま 2025年5月上旬号
■届け、私の牧園愛
手嶋 正次(まさつぎ)さん(77)
牧園町出身。「ふるさとみがき」の傍ら、野菜作りや孫へのタケノコ掘りに精を出す。畑にあるナシのかれんな花を眺める時間が癒やし。
牧園町在住。
韓国岳(からくにだけ)などの霧島連山を望み、今も豊かな自然が残る牧園町。この自然を守るための環境美化活動や、牧園町の文化・歴史を継承し、発信する活動などを行っているのが手嶋正次(まさつぎ)さん(77)です。
牧園町に生まれた手嶋さんは、当時最先端の通信技術を操る無線通信士に憧れ、その技術を学ぼうと熊本電波高校(現・熊本高専)で第一級無線通信士の資格を取得。その後、無線通信士として商船に乗り海外を航海していましたが、航空局で同職の募集があり海から空へと活躍の場を移しました。
手嶋さんは航空局で後進の育成や、新千歳空港の事務所長として現場の総指揮を執るなど要職を歴任し、その長年の功績が認められ、瑞宝小綬章も受章しています。
退職後に牧園町へ帰郷した手嶋さんは「私がここまで勤め上げられたのは、牧園というふるさとの存在のおかげです。資格の勉強や航空局での大きな試練の時に思い出していたのは、牧園の風景やお世話になった人々のこと。泣き言は言えないと心を奮い立たせ、困難を乗り切る原動力になってくれた愛するふるさとに、何か恩返しがしたかった」と振り返ります。思いを形にしようと「史跡・文化財・景観モデルロード実行委員会」を立ち上げ、18人の仲間と『ふるさとみがき』をスローガンに、牧園町の環境美化活動や文化・歴史を継承する活動を行っています。「私の思うふるさとみがきは、自然や景観の維持はもちろん、牧園の歴史などの魅力を再発見して多くの人にお伝えすること。それが恩返しになればうれしいですね。子どもたちの学習に役立てばと(※1)標柱の整備もしていて、たとえ子どもたちがこの場所を巣立っても、牧園に愛情を感じていつか戻ってきてくれたらうれしい」とほほ笑みます。
牧園町の歴史や文化の史料編さんも行い「自分たちのペースで好きな分野から進めていたら、あっという間に11冊になった」とはにかみます。完成した作品は西南戦争の(※2)堡ほう塁るいから考える戦闘の推移をまとめた物や、昭和の牧園の写真集など多岐にわたります。作品は市の施設などに寄贈され〝牧園愛〟を届けています。
今年4月には、(※3)外城(とじょう)についての調査をまとめた『霧島市の外城』を発刊。本作品は牧園町だけでなく市全体を調べ上げた大作です。「牧園の歴史をたどれば市全体の歴史も知りたくなる。これはその挑戦の一環」と新たな取り組みに情熱を燃やします。次なる構想は、霧島の自然が織りなす隠れた絶景を探し出し紹介すること。多くの人にふるさとの魅力を伝えたいという意欲はとどまることを知りません。
(※1)目印のための柱。ここでは歴史的な事跡を示し、地域の歴史を伝える物。
(※2)敵の銃弾から身を守るために、土を盛って築いた壁。
(※3)近世の薩摩藩の行政区画。
▽作品を購入したい人は問い合わせください
史跡・文化財・景観モデルロード実行委員会[手嶋]
【電話】090-6776-2458