- 発行日 :
- 自治体名 : 沖縄県金武町
- 広報紙名 : 広報金武 2025年5月号
先月号に引き続き、令和7年1月9日~2月12日に実施された青年海外派遣事業で海外5ヵ国(ブラジル・アルゼンチン・ボリビア・ペルー・米国ロサンゼルス)へ行って来た研修生、伊藝雄飛さん・花城梓さんの研修報告をシリーズでお届けします。今月はペルー・ロサンゼルスでの研修について報告します。
■ペルー 2月2日~2月6日
ペルーでの日系人コミュニティとの出会いは、私に強い印象を残しました。沖縄から移住して126年、三線やエイサー、紅型などの伝統文化が今も大切に受け継がれ、文化を軸に人々がつながりを守り続けていることに感動しました。特に、地域に深く根づき活躍されているマヌエルさんの姿からは、多くの沖縄系の人々との繋がりを大切にして医療や町人会などの活動に参加し、沖縄や日本との繋がりを続けていく姿勢に感銘を受けました。私はこれまで、當山久三ロマンで地域の伝統芸能と関わりながら、沖縄の文化が人と人を結び、世代を超えて力を与える場面を多く経験してきました。ペルーで出会った人々の温かさや文化への誇りに触れ、これまでの自分の経験を活かして、沖縄と中南米をつなぐ文化交流や人材育成の活動に取り組んでいきたいと強く感じました。今後も、互いのルーツや歴史を尊重しながら、国境を越えたつながりを築いていきたいです。
伊藝 雄飛
ペルーは、ウチナーコミュニティを盛り上げる活気に溢れ、砂辺で開かれた新年会では、立て看板にMENSORE、HAISAI・HAITAI、ICHARIBA CHODE等と描かれ歓迎ムードに満ちていました。沖縄県人会の会場には、各市町村の特徴を取り入れた絵画が並び、金武町は當山久三とターム君がデザインされ、手前には金武町憲章が刻まれた石碑のある庭園もありました。資料館では、当時の金武町長が自らインタビューに訪れ作成したという金武町史を見せて頂きました。滞在中も、色々とお世話になる中で、温かく対応してくださる町人会の皆さん。会長が両親と交わした約束「金武町から訪れてくる人たちに最大限のおもてなしを」は、一世の方々に共通する想いでもあり、その心が二世、三世の皆さんにも受け継がれており、私自身が迎え入れる側になった際は、精一杯の恩送りをしたいと思いました。
花城 梓
■ロサンゼルス 2月7日~2月11日
ロサンゼルス研修で印象的だったのは、祖父・伊藝文隆の教え子たちとの再会や、琉球国まつり太鼓の練習見学を通して、沖縄の伝統がアメリカでも力強く生き続けていることに触れたことです。もう一つの大きな喜びは、ニーナ先生との再会でした。かつて沖縄に住んでいた先生が今はロサンゼルスで活動しており、一緒に過ごせた時間は、沖縄っぽさを感じたり、沖縄や金武との繋がりを感じながらロサンゼルスでの生活を送っている人の話を聞くことができ、個々人のルーツに対する思いを感じることができました。今後は、個々人が持つ思いを共有できるような活動をしてみたいと感じました。當山久三ロマンでの経験を活かして、ロサンゼルスとの繋がりを深めていきたいです。
伊藝 雄飛
ロサンゼルスでは、世代を問わず多くの方が沖縄の伝統芸能を継承したいという想いを共有していました。新年会では、「ミルクムナリ」や「かぎやで風」など、太鼓や舞踊が披露され、元研修生の娘さんたちも姉妹で余興を踊り、会場を盛り上げていました。また、5月に開催予定の沖縄伝統芸能の案内状も各テーブルに配布されており、沖縄県人会が伝統芸能を守ろうとする熱意が感じられました。後日、太鼓の見学もさせて頂き、日々練習に励む姿勢や、SNSを利用して宣伝に取り組む姿を見ることができました。そして会長の父は1978年に渡米された際、沖縄コミュニティが既に形成されていたため、一度もホームシックになったことがないと伺い、最初は驚きました。しかし新年会などで琉球舞踊やエイサーを鑑賞したり、沖縄そばが振る舞われたりと、日々の生活の中で故郷・沖縄を感じる機会がある事を知り、深く納得しました。
花城 梓
今回の研修で私は、北南米5か国を訪れ、世界各地に根づく沖縄移民の歴史と人々の想いに触れることができました。ブラジルでは祖父のいとこにあたる親戚と出会い、血のつながりを通して、自分のルーツが確かに生き続けていることを実感しました。アルゼンチンでは新里家の皆さんのあたたかいもてなしに心が和み、ボリビアでは厳しい環境の中で暮らすウチナーンチュの姿から、生活の中にある誇りと強さを感じました。ペルーでは、医療従事者であり町人会会長を務めるマヌエルさんの地域に対する献身に心を動かされました。最後に訪れたロサンゼルスでは、個々人が沖縄とのつながりを大切に守り、世代を超えて伝えていこうとする姿勢に学びがありました。私は、當山久三ロマンで培ってきた伝統芸能の経験や言語力を活かし、沖縄・金武町と世界各地の人々とのつながりをさらに深める活動に取り組んでいきたいと考えています。文化や思いを通して互いに助け合って笑い合えるような関係性を作っていきたいです。
伊藝 雄飛
出発前には、當山久三に関するセミナーや移民資料、移民を舞台にしたドラマをとおして、知識を深めたつもりでした。しかし、実際に現地を訪れてみると、書物や映像からはくみ取れなかった当時の人々の感情や苦労、想いを、当事者や二世三世の方々から直接聞く事ができました。どの国を訪れても、移民先にいるウチナーンチュは、沖縄の伝統芸能や文化を守り、次世代に伝える活動に熱心に取り組んでいました。南米四カ国では、毎年ペルー・アルゼンチン・ボリビア・ブラジルの順で、沖縄にルーツを持つ若者達のイベント「Niseta Tour」が開催されており、ブラジル滞在中に特別に参加させて頂きました。会場では空手・獅子舞・三線・踊りなど、沖縄にまつわるワークショップが行われており、南米生まれのウチナーンチュに習い、人生で初めて三線に挑戦しました。さらに、連想ゲームも行われました。このゲームは「他国から来た人が、現地で当たり前とされる文化や習慣にどれだけ気づきにくく、また身につけるのが難しいか」を体験してもらうもので、移民一世の方々が直面した苦労を楽しみながら学べる工夫がなされていました。この研修は、単に沖縄移民の歴史について知識を深め、個人レベルでの親交を深めるということにとどまらず、今の沖縄の在り方を客観的に見つめ、若い世代にどのように関心を持ってもらい、どう伝えていくかということについて、深く掘り下げて考えるヒントをたくさんいただく機会となりました。
花城 梓