しごと 未来へつなぐ―それぞれの事業承継(1)株式会社ロイヤル農機

村内に事業所を置く中小企業者の円滑な事業承継のため、事業承継に要する経費に対し補助金を交付する「真狩村中小企業経営承継事業補助金」制度を昨年より開始しました。
この制度を活用し、事業承継を行った事業所を順次ご紹介していきます。

■創業75年 ロイヤル農機は次のステージへ
昭和25年の創業以来、農機具や除雪機の販売・修理を主軸として地域の農家や住民に親しまれてきた「ロイヤル農機」。代表の大平雅彦さんは高齢化に伴い5、6年前から事業の将来について考え始めていたそうです。

▽運命の出会いと大胆な決断
そんな折、3年前に転機が訪れます。除雪機を求めフォロ・スチュアートさん、かおりさん夫妻が来店。利用していた店の閉店に伴い、インターネットでロイヤル農機を見つけたそうです。
スチュアートさんはオーストラリア出身でニセコ在住。日本語が堪能で店を利用するうちに大平さんと親しくなり事業承継の話を聞きます。後継者を探しているという大平さんにスチュアートさんは「私がやります!」と立候補したのです。この店は、自分はもちろん、地域にとっても必要な店だと感じていたスチュアートさんに迷いはありませんでした。
突然の申し出に大平さんは半信半疑でした。しかし、フォロ夫妻は熱意を持って店を手伝い始め、時には家族を連れて作業に励みました。さらに外国人の友人たちに除雪機を販売するなど、着実に実績を積み上げていきます。その姿を見て大平さんは「この人なら」と決断し、事業承継に向けて動き出しました。

▽客から経営者へ フォロ夫妻の挑戦
まず取り組んだのは法人化でした。大手メーカーとの取引条件をクリアするための重要なステップで、令和6年1月、大平さんが代表の株式会社となりました。
並行し、1年かけて顧客の引き継ぎや経営のノウハウをフォロ夫妻に伝授し、今年の1月、代表取締役にかおりさんが就任。スチュアートさんと大平さんは役員として、新たな株式会社ロイヤル農機がスタートしました。
事業承継にあたり、フォロ夫妻に苦労した点を聞くと、「日本の会社設立には時間がかかる。また、事業承継は小規模事業者にとって複雑な仕組みで、もっとわかりやすくなれば」。今後については、農業用ドローンの販売にも力を入れ、事業の幅を広げていきたいと話していました。
一方、大平さんは「商工会のサポートを受け、行政書士、事業引継ぎ支援センターの支援を受けられたことが心強かった」と振り返りました。そして「ロイヤル農機は今年で創業75年。ぜひ100年続く会社にしてほしい」とエールを送ります。

取材中も笑い声が絶えず、温かな雰囲気の中でお話を伺いました。地域を支える店として、ロイヤル農機のますますのご発展を期待します。