健康 けんこうだより

■今月のテーマ/軽度認知障害(MCI)について
筆者:地域包括支援センター・保健師 石田楓

「人の名前が思い出せない」「探し物が多い」等、最近「物忘れ」が増えたと感じることはありませんか?
年を重ねるにつれて物忘れが増えることで、自分は認知症になってしまったのかもしれないと心配や不安を抱えている方もいると思います。物忘れの症状には、生理的な物忘れと将来的に認知症に移行する可能性がある軽度認知障害(MCI)による物忘れの場合があります。

▽軽度認知障害(MCI)とは
軽度認知障害は認知症と診断される一歩手前の状態で、本人や家族に物忘れの自覚はあるものの日常生活は問題なく送ることができている状態を指します。物忘れを放っておくと認知症に進行しますが、適切な予防・治療をすることで健常な状態に戻る可能性もあるため、早期の対処が重要です。

▽生活習慣病との関係性と予防
生活習慣病は認知症の危険性を高めることはご存知ですか?
生活習慣病には糖尿病や高血圧、肥満、脳卒中、脂質異常症などが当てはまります。これらの病気は認知症と深い関わりがあり、なかでも糖尿病と脳卒中は、中年期(40歳~64歳)・高齢期(65歳以上)に関わらず認知症の危険性を高めると言われています。認知症予防は、中年期と高齢期で着目するポイントが異なるため、自分の年齢に応じた予防を心がけることが大切です。
中年期では、生活習慣病を予防するために「肥満・メタボ対策」が重要となります。内臓脂肪が増えることは脳の炎症と関連があり、脳の異常変化につながります。肥満傾向が強い人ほど早い段階から認知機能が低下しやすいと言われています。
一方で高齢期では、要介護状態を予防し寝たきりにならないように「やせ・フレイル予防」が重要となります。フレイルとは、身体の機能が衰え様々な病気になる可能性が高い状態を指します。フレイルは認知機能低下のリスクを高めると言われており、身体機能を維持することが予防策となります。

軽度認知障害は適切な予防・治療をすることで回復したり、認知症の発症を遅らせたりすることができる場合があります。「物忘れがあっても仕方ない」と諦めずに、少しでも長く元気で過ごせる方法を考えていきましょう!
以前と比べて物忘れが多いと感じる、家族や友人から物忘れを指摘されることが増えた方は医療機関への受診をお勧めします。また、物忘れに関する相談や専門外来の紹介などは地域包括支援センターでも対応していますので、お気軽にご連絡ください。
連絡先【電話】0136-47-2277

出典:MCIハンドブック
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター2024