文化 月形花図鑑(5)

こんにちは。月形町地域おこし協力隊の石原絢子です。こちらのコーナーでは、月形町で生産されているお花を詳しくご紹介しています。初夏の日差しが優しく降り注ぐこの時季に、ひときわ目を引く大輪の花を咲かせる「芍薬(しゃくやく)」。その優雅で華やかな姿は、多くの人々を魅了し、お庭の主役として愉しむ方も多いです。月形町産の「芍薬」も6月上旬~中旬の短い期間ですが市場への出荷を行っております。今回は、そんな「芍薬」の魅力についてご紹介します。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」「芍薬」といえば、このことわざを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。女性の美しい立ち姿を「芍薬」に例えたこの言葉は、まさに「芍薬」の持つ気品と存在感を言い表しています。また、その美しさだけでなく、古くから薬としても重宝されてきました。生薬としても「芍薬」と呼ばれ、特に根が用いられます。婦人病や鎮痛、消炎作用があるとされ、漢方薬にもよく配合されています。この特性は花名にも用いられ、中国語では「芍(しゃく)」という漢字が、しなやかで美しいという意味を持つことに由来するというもの、「芍薬」の茎や花がしなやかに風に揺れる姿を表しているとも考えられます。また、「薬」の字は、そのまま薬草としての効能を表しています。このように、「芍薬」の名前には、薬用としての価値と、しなやかで美しい花の姿の両方が込められているのですね。
学名も掘り下げてみましょう。ボタン科ボタン属に分類される「芍薬」は学名を「Paeonia lactiflora(パエオニア ラクティフローラ)」といいます。Paeoniaはギリシャ神話の医薬の神「パイエオン(Paeon)」に由来し、lactifloraは「乳白色の花」を意味します。これは、薬用植物としての歴史と、品種の基本となる白い花の色を表しています。
原産国は中国北部とされており、東アジアから北アジアの寒冷地に広く自生しています。日本には平安時代に中国から伝来しましたが、当時は薬用として先に広まったそうです。その後、観賞用としても人気がでて栽培が盛んになりました。世界中に約1000種が存在するとも言われており、「和芍薬」、「洋芍薬」、牡丹と掛け合せた「ハイブリッド芍薬」と分類されています。昨今は北海道の市場でもさまざまな品種を見ることができます。ちなみに、私の好きな品種は「氷点」「華燭(かしょく)の典」「エッジドサーモン」「コーラルピンク」「レッドレッドローズ」と挙げだしたらきりがないです。花言葉は「威厳」「誠実」「恥じらい」など。咲いた花姿の美しさや蕾の可愛らしさが由来していそうですね。
地植えで楽しむ場合は寒冷地でも育てやすく、植え付けた場所で毎年花を咲かせ、長く私達の目を楽しませてくれます。
ただ、切り花で楽しむ際には少しコツがいるので、お手入れ方法をご紹介します。
・購入時は、ふっくらとして色づいている蕾を選びましょう。硬い蕾だと咲かない場合があります。
・購入後は、葉を落とし、茎を斜めに切り、茎の中のワタを取り除くことで水の吸い上げが良くなりしっかりと水上がりします。
・蕾が硬い場合は、蕾表面の蜜を、濡らしたキッチンペーパーで優しく拭き取るか、流水で洗い流しましょう。蜜がくっついて開花しづらいことがあります。
・外側のガクをそっと外しましょう。蜜同様、ガクが開花をおさえてしまうことがあります。
・それでも咲かないときは手で包みこんで息を吹きかけ、優しく温めることで開花が促されます。