くらし 【特集】豊かな海を守るために

■地域と環境問題
海洋ごみの多くは、私たちの暮らしの中から発生したものです。「身近な海を守る」ことは、私たちの暮らしや地域の未来を守ることに繋がります。だからこそ、環境問題に対し、地域全体で取り組むことが、重要です。
猿払村は日本有数のホタテの生産地であり、毛ガニやサケなども水揚げされます。この豊かな海を守るために、、村では様々な取り組みを行っています。今回はその一部をご紹介します。

◆前浜清掃
毎年の恒例行事となっている前浜清掃は平成14年7月14日に「海岸清掃事業」として始まりました。知来別から浜猿払までの海岸線(前浜)33.4キロメートルを各地点に分けて清掃を行い、毎回多くの住民がボランティアとして集まります。
今年は5月18日に実施し、276名が参加。漂着したペットボトルなど約3.7トンのごみを回収し、きれいな前浜にすることができました。

▽参加者の声
・毎年参加していますが、プラスチックなどのごみが多いと感じます。環境問題については前浜清掃に参加する前から意識していますが、この活動を通してより考えるようになりました。
・地域の活動に参加したいと思い参加し始めました。この活動を通して、子どもたちにごみのポイ捨てをしないよう教えています。

◆お魚殖やす植樹運動
▽植樹運動のはじまり
この取り組みは、河川の環境を保ち、豊かな漁獲を確保するための森造り、そして美しい海を育むことを目的として、漁業協同組合女性部を中心に昭和63年から行われています。

▽森林の役割
山にある森林は、川を通じて海に流れ込む栄養分や土砂をコントロールし、海の生態系を豊かに保つ役割を果たします。具体的には、森林が水質浄化、土砂流出の抑制、そして海洋生物の生息環境の維持に貢献しています。

▽植樹で海が綺麗になる仕組み
(1)水質の浄化と土砂流出の抑制
森林は、雨水を吸収し、川の水をきれいにします。ほかには根を張って土壌を固定し、土砂流出を防ぎます。土砂流出が少なくなれば、海への濁りが減り、水質が向上します。

(2)海洋生物の生息環境の維持
森林の近くには、魚の生息に適した環境が整っていることが多いです。森林が守られていることで、魚や貝などの海洋生物が生息しやすくなり、豊かな海の生態系が保たれます。
また、森林の土壌には、窒素やリンなどの栄養分が豊富に含まれており、これが川を通じて海に流れ込むことで、海洋生物の成長を促します。

◆漁港などの清掃活動
▽漁業協同組合女性部の活躍
漁業協同組合女性部では、毎年、村内の漁港といさりの碑の清掃活動を行っています。漁港をきれいな状態で保つことは、豊かな村を支える産業のひとつである、漁業を支えることに繋がります。若い部員の方も積極的に参加しており、活発に活動をされています。

◆美しい海を受け継ぐ
第三十八松栄丸
山森 鋭紀 船頭

前浜清掃は毎回実施日があらかじめ決められており、雨が降っていたり、風が強かったりと大変な日もありましたが、お忙しい中参加してくださる村民の皆様には感謝しています。
前浜清掃を行う中で時折、海外から流れ着いたごみを見かけます。私たちも沖でごみを捨てないように仕事をしていますが、こういった環境問題への意識や活動が他の国にも伝われば良いなと思っています。また、前浜を歩きながら「昔は砂浜がもっと向こう側まであったな」と気が付き、ホタテも水温が上がると生息できなくなってしまうので、地球温暖化について考えたりと、環境についての意識の変化もありました。
この活動を通して、自分たちの子どもや孫の世代に、これから猿払村のきれいな海を受け継いでいって欲しいです。

◆一人ひとりの意識から
漁業協同組合女性部
稲川 由美子 部長

植樹運動は例年、アカエゾマツのみを植えていましたが、昨年から新たな試みとして、広葉樹と合わせて植えたり、場所を変更するなどの工夫を行っています。この作業を始めるにあたり、組合長や森林組合の方とお話をする中で、様々な人と関わらないと気が付かないことがたくさんあると感じました。植えた木が無事に成長し、自分たちで始めた取り組みの成果が実る姿を見届けるのが楽しみです。
環境問題に取り組むためには、普段生活している中での個人の意識が大切です。最近は女性部に加入してくれる若い方も増えてきているので、みんなでリサイクルセンターに見学に行きたいと考えています。自分たちが捨てたごみがどのように処理されているのかなどの細かいところまで学ぶことは、環境問題への意識の変化に繋がると思います。