- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道中札内村
- 広報紙名 : 広報なかさつない 令和7年6月号
■困難を愛せよ
劣等感に苛まれていた私が、古里の活性化を願い村長を目指すことになり、今日に至るまでの日々は、人間がどれほど可能性を秘めた存在かを実感させてくれる貴重なものでした。この歩みを皆さんと共有し、現任期最後のコラムとします。
私の本質を明かします。実は、波風を立てたくない事なかれ主義者。極度のあがり症でもあります。大学友人の結婚披露宴のスピーチで、原稿を持つ手が緊張で震えて読めなかった苦い経験があります。
転機は、元の勤務先で広報業務を担当していた40代前半。赤字続きの雑誌を立て直す特命を受けたことです。しかし、自分の取り柄といえば生真面目さだけ。部下を持った経験もなし。編集長として個性的な同僚と衝突しつつ、毎朝の朝礼で前向きな言葉をかけ続け、自ら機嫌よく、全力で仕事に向き合うことを心掛けました。やがて編集部内に笑い声が響くことが増えてきました。全員の気持ちが一つになると不思議と売り上げも伸び、1年余りで赤字体質を脱しました。
編集長が板に着いてきたころ、縁あって村長選挙に挑戦。住民協働や情報発信の推進に自分の経験が生かせると考えたのです。落選しましたが、その後に得たものは大でした。コンビニでの勤務は視野を広げ、議員活動では行政課題を深く学べました。50歳で村長に就任後は、下手でも思いを込めて話すことに意識を向けるとスピーチにも慣れました。政策決定のための情報収集を通じて、若い時以上に記憶力と思考力がきたえられました。人は何歳からでも成長できる、不得手は単なる不慣れなのだと心得ました。
困難や障害に見えるものは成長の種です。肯定的に受け止めてください。何より自分の可能性を信じてください。皆さんが未来に希望を持ち、優しく穏やかに人生を楽しまれることを願っています。
極度のあがり症でも村長の務めを果たせました。人間の可能性は無限です(就任1年目の敬老会式辞)