- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道浦幌町
- 広報紙名 : 広報URAHORO 令和7年3月号
■連載167
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝
広報誌「うらほろ」2025年2月号を頂戴致しました。新年早々には言うまでもなく、どこの自治体でも、重要な式典の一つである「はたちの集い」が開催されます。浦幌町の式典に参加された新成人の皆さんの写真を拝見しました。和装、洋装を問わず、晴れ晴れとした表情が印象的です。私も稚内市の「はたちの集い」に参加しました。稚内大谷高校に着任して初めての卒業生が新成人となりました。幸せの在り方や幸せの形は、もちろん一人ひとり異なるでしょう。ですが、誰もが幸せな人生を送って欲しいと願うばかりです。
さて、感動を与えるとまではいかなくとも、多少なりとも人の心に届く話し方とは如何なるものでしょうか。最近、私が実感したことをお話したいと思います。広報誌「うらほろ」2025年1月号で紹介させていただいた拙著『組織と仲間をこわす人、乱す人、活かす人』(PHP新書)は、いささか面映いのですが、意外に好評で、はや重版の運びとなりました。著者としては望外の喜びです。個人的に謹呈した方々だけでなく、購入していただいた方々から、様々な感想をお寄せいただいていますが、それらは抽象的な感想と具体的な感想に大別されます。自戒を込めて言うならば、聞き手あるいは読み手と言った受け手の視点に立って考えると、具体的かつ誠実に話すことや書くことの大切さを再認識しました。
ある企業経営者からは「勉強になりました」と言われました。また、別の企業経営者からは「これから勉強させていただきます」と言われました。私はお一人お一人に「ありがとうございます」とお礼を述べました。ただそれだけです。形だけの社交辞令。
この「勉強」という言葉が極めて抽象的です。私より年長の前者は、何が勉強になったのか全く把握できませんでした。後者は失礼ながら、おそらく読まないだろうと邪推してしまいました。要するに、両者とも単なる形式的なお礼であったと、私は受け止めました。
他方、「ただ今拝読中ですが、先生の熱い思いとお人柄が頁を繰るほどに強く感じられ、読んでは思い、思ってはまた読むという状態で、到底速読に叶う内容ではありません」という感想を、大学教員時代の先輩教員からいただきました。また、「59のご教訓を拝読させていただきましたが、これまでの自分の振る舞いを思い出し、慙愧に堪えません。遅きに失した感はありますが、今後の自分の言動に、一つでも多く反映できるように精進して参りたく存じます」という感想を、大学の後輩である地方公務員管理職からいただきました。
まさに汗顔の至りです。けれども、「丹念に読んでくれているんだ」「大した内容でもないのに、少しは役に立ったかな」など、あらためて受け手として、私自身が何某かの思いを抱くことができます。それは読んでくれた証であり、具体的に表された指摘や内容が受け手の心に届くからです。信憑性や説得性を持たせるためには、まずは具体性です。
どこかに案内してもらったとき、演劇や演奏会などに招待されたとき、あるいは食事をご馳走になったとき、贈り物をいただいたとき、それぞれにお礼を述べることは常識です。
その際、具体的な内容を取り上げて、それなりの印象や感想を盛り込みながら感謝の気持ちを伝えることができる意思と実践も、広義の仕事力の一つではないでしょうか。
▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。