- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道羅臼町
- 広報紙名 : 羅臼町広報誌「魚の城下町」〜みんなが主役のまち〜 2025年9月号
昨年より開催しております「知床国立公園指定60周年・知床世界自然遺産登録20周年記念事業」(以下記念事業)につきましては、9月6日、7日に羅臼町オートキャンプ場で開催されました、「知床アドベンチャーフェスティバル2025」を以って主催事業が終了となりました。
午後1時から、参加者の皆さまは次々と来場され、勾玉アクセサリーづくりやガラス玉ペイント、エゾシカオイルキャンドルづくりを楽しみました。
午後4時からはオープニングセレモニーが行われ、その後は冒険家・石川直樹氏によるアスリートトーク、地元食材をふんだんに使った夕食、知床財団によるヒグマトーク、地元漁師による漁師トークとイベントが続きました。
最期は焚火を囲み、夜が更けるまで思い思いの時間を過ごしていただきました。
翌朝は、地元女性団体﹁美活塾﹂の皆さんが朝5時から準備した朝食を食べて、11時のイベント終了まで、知床の大自然を満喫してキャンプ場を後にしました。
■その他、令和7年度に開催された知床国立公園指定60周年・世界自然遺産登録20周年記念事業
▽NHK「知床・大いなる自然の世界」スペシャル上映イベント
NHKアーカイブスから蔵出しした「知床」がテーマの番組を上映し、ゲストによるトークを交えた、知床の魅力を探るイベントが開催されました。
開催日:令和7年6月15日(日)
場所:羅臼町民体育館(らうすぽ)
参加者:110名
▽映画「地の涯に生きるもの」上映会
羅臼を舞台にした戸川幸夫作「オホーツク老人」を森繁久彌主演で映画化した不朽の名作「地の涯に生きるもの」を上映しました。
開催日:令和7年6月22日(日)
場所:羅臼小学校
参加者:130名
▽知床世界自然遺産登録20周年記念シンポジウム
知床が平成17年7月17日に世界自然遺産に登録されて20周年を迎えたことから、多様な識者や関係者が集い、これからの知床について語り合い、発信するシンポジウムが開催されました。
開催日:令和7年8月31日(日)
場所:ゆめホール知床文化ホール(斜里町)
参加者:160名
■知床国立公園指定60周年・世界自然遺産登録20周年記念対談
羅臼町長 湊屋稔×斜里町長 山内浩彰
知床の世界自然遺産登録20周年を記念して知床の未来を担う羅臼町と斜里町の町長による対談が開催されました。
―知床で生まれ育った両町長にとって「知床」の自然とは
山内町長:実家が農家である私にとって、知床の自然は空気のような存在で、特別に意識はしていませんでした。しかし、過去の開拓により必要となった森づくりに対しては特に思い入れがあります。町長になり100平方メートル運動を支えてくださる全国の皆さんの存在を身近に感じたことで、その思いは一層強くなりました。
湊屋町長:羅臼で漁師の家に生まれた私としても、知床の自然は「当たり前の存在」でした。一方で、その厳しさと魅力についても理解していました。そして、町長になって知床の自然を絶賛する声を直接聞く機会が増え、知床の価値を改めて実感するようになりました。
―この地で生まれ育ったからこそ、当たり前になっていた「知床」の存在。多くの知床を愛する皆さんの声が両町長の知床を守り育てる決意を確固たるものにしました。
知床が世界中の皆さんを惹きつける理由とは一体何なのでしょうか。
山内町長:この地域は、厳しい自然環境の中で人々が暮らし、営みを続けてきた土地です。知床を訪れる人々は、自然だけでなくここで生活する人々の姿にも強く感銘を受けるのだと聞きます。訪れた人のリピート率が高いことがその魅力を物語っています。この地域の特色は、自然と人の存在が深く結びついている点にあるのかもしれません。
湊屋町長:羅臼町は細長い地形ですぐ目の前に海、後ろには山が広がる自然豊かな町です。厳しい環境の中で何世代にもわたって暮らし、町を築き上げてきたことが大きな誇りとなっており、その強い意志が今も町の原動力となっています。そういった思いが多くの人々を惹きつけていったのだと思います。
―美しくも厳しい自然の中で、今日まで営みを続けてきた、知床でたくましく生きる人々の存在もまた、多くの人を魅了しているのです。
―長きにわたり先人たちが築き上げ、全国の皆さんの応援により世界の宝となった知床。これから先も「知床」の名を残しその価値を維持していくために、両町長の目指す未来について伺います。
山内町長:斜里町・羅臼町を含むこの地域は、先人たちが自然と共生しながら生活を築いてきた歴史を持ちます。時を経て科学技術などが進歩し、新たなやり方やツールも生まれていますが、その精神や思いは変わりません。そのことをしっかりと理解し、次世代へ受け継ぐことが重要であると考えています。未来を創るのは、今を生きる皆さんです。知床で暮らす若い世代や子どもたち、そして新たにこの地域に移住する皆さんに、これまでの先輩たちが受け継いできた理念を継承していくことが、知床の未来へ繋がると信じています。
湊屋町長:知床は羅臼町と斜里町の2つの自治体に分かれていますが本来は1つの地域です。峠の存在によって人の行き来が制限されることはあっても、動物や鳥たちは自由に行き来しているのです。知床の自然環境はひとつながりのもの。行政やエリアの枠組みにとらわれず、住民が一体となることが重要です。知床という貴重な財産を守り、後世に残していくために、羅臼町と斜里町でひとつになってこの地域の未来をより良いものにしていきましょう。
―知床の自然に境界線はありません。これからも隣合う両町民で手を携え、世界自然遺産・知床を未来へ届けていきましょう。
