くらし 【特集】どんな絶景よりもあたたかい場所(1)

■Aomori Global Advance Project 2025 むつが好きだと叫びたい
Aomori Global Advance Project(AGAP)は、シンガポールや東南アジアの活力を取り込み、地域の稼ぐ力の成長へつなげることを目的として令和2年に立ち上がった事業です。
この取組は4年目を迎え、シンガポール国立大学(NUS)と、今年から新たにカリフォルニア州立大学イーストベイ校(CSUEB)から合計18名の学生を迎え、3週間にわたる体験や交流を通して、地域への学びを深めました。今後は、海外でのインターン実施と、12月の事業報告会を予定しており、この短期留学をインバウンド需要に結びつけていきます。
今回は、世界トップクラスの大学に通う若者たちが、むつ市で行なった活動の様子をご紹介します。

◇シンガポール国立大学(NUS)
1905年に設立された総合大学で、2024年の世界大学ランキングではアジア唯一のTOP10入り(世界8位、アジア1位)を果たしています。NUSは100か国以上からの留学生を受け入れており、日本語プログラムは毎学期約700名以上の学生が学ぶ最も人気のあるプログラムです。

◇カリフォルニア州立大学イーストベイ校(CSUEB)
1957年設立の州立大学群のひとつで、ウォーカルストリートジャーナルにより、多様性部門で西側のトップ10の大学として認定されています。少人数制の授業が特徴で、50の専攻と61の副専攻、35の修士課程を有し、グローバル社会に必要な知識と研究に重きを置いています。

■むつ市を好きになってもらうために
学生たちは日本での短期留学を皮切りに、帰国後のインターンシップや海外イベントでの活動など、数ヶ月にわたってプログラムに携わります。その中でも、この3週間にわたる短期留学の期間中は、「学生たちにむつ市を好きになってもらうこと」が最大の目標でした。
学生たちは、恐山をめぐり、奥薬研の自然の中をトレッキングし、自ら魚をさばいて海鮮丼をつくるなど様々な経験を重ねました。ホームステイや市内の中学生たちとの交流など、むつ市でしかできない体験や出会いをたくさん経験しました。
また、学生たちは釜臥山に沈む夕日に、展望台からのぞむ夜景や星空に、陸奥湾の穏やかな海に、むつ市の美しい自然の全てに感動していました。
そして何よりも「地域の人々が優しくあたたかい」と学生みんなが話す様子が印象的でした。
帰国を間近に控えたある日、学生の1人が「もうすぐ現実に戻らなくちゃいけない。夢みたいに楽しいこの時間が終わってしまう…。」と寂しそうにつぶやきました。むつ市で過ごした日々の充実感と、別れの寂しさが、ひしひしと伝わってきました。
今後、彼らはそれぞれの国に戻り、むつ市の魅力を海外で発信していく力強いパートナーとなってくれます。ぜひ皆様にも彼らの活躍を応援していただければ幸いです。そして、いつか彼らがむつ市に帰ってきたときは、ぜひ「おかえりなさい」と笑顔で温かく出迎えてください。

■単なる観光地ではなく「心の拠り所」むつ市を自分の特別な場所に
AGAP2023に参加してもう2年が経ちます。
むつ市に初めて訪れた時、ホテルから夜ご飯を食べに行こうと外に出ると、最終バスが19:30頃で道沿いの多くのお店はすでに閉まっていました…。小さいころに訪れた東京や大阪と違い「静かなまちだな」と思ったのが正直なところです。
ホームステイ中、ホストファミリーに何気なく「誰々は展望台に連れて行ってもらった」と話しただけで「じゃあ私たちも行こう!」とお風呂上りだったにも関わらず、すぐ連れ出してくれたことを今でも覚えています。学業で行き詰まり、不幸が重なっていた当時の私に、カラオケで「好きな曲を入れて好きなように歌いなさい!」と励ましてくれたこともありました。そんな中、滞在を重ねるうちにむつ市への印象は「人が温かいまち」へと変わっていき、私にとってむつ市は単なる観光地から「心の拠り所」となりました。
AGAP2023を通して、私はむつ市に深い愛着を抱くようになり「このまちに恩返しをしたい!」という気持ちが強くあります。このたび、むつ市で働く貴重な機会をいただき、私の強みである「外から来た人間の視点」を活かして、むつ市が「自分の特別な場所」になるように、訪れた方にとって良い体験になるよう改善や可能性を一緒に考えていけたらなと思っています。

◇ムー・ユーチェンさん
シンガポール国立大学(NUS)卒業
AGAP2023に参加し女子チームのリーダーとして活躍令和7年7月よりむつ市地域活性化企業人として一般社団法人しもきたツーリズムへ派遣インバウンドの誘客に取組む