くらし 【特集】考えませんか?空き家モンダイ(2)

●現場の声~専門家に聞く
市内で空き家の売買や管理に携わり、多くの悩み相談に耳を傾けてきた不動産の専門家に、空き家問題について聞きました

▽空き家になる前に
空き家についての相談の中には「無償譲渡でもいいから手放したい」といった切実な悩みが少なくありません。そんな声を耳にするたび、10年前に相談してくれていたら解決策があったかもしれないのに…と、もどかしく感じています。
お願いしたいのは、空き家になる前に相談してほしいということです。都会に住んでいる人が空き家になった実家を相続し、定期的に帰省して手入れができているうちはいいのですが、そこから10年、20年たって体力もなくなり、だんだん足が遠のいて、いよいよどうにもならなくなってから初めて「空き家をどうしよう」と真剣に悩み始めています。「手放すのはもったいない」と空き家を持ち続けていたのに、維持管理費をかけ続けた末、厄介な荷物を処分するような感覚で最後になってしまうのは残念でなりません。実家をどうするかをできるだけ早い段階で家族の皆さんと話し合っておくと安心です。

▽空き家の可能性
中古物件は状態、立地、価格によっては一定のニーズがあります。そうではない特徴のある物件についても、1棟貸しの民泊宿や社員寮として活用できた例があります。日本家屋の民泊宿は外国人観光客に好評です。空き家は生かし方次第では、地域資源として役立つ可能性があります。

▽庭木の管理も気に掛けて
空き家の管理で気を付けてほしいのは庭木です。落ち葉の影響で雨どいや屋根が劣化したり、隣の家に越境したりするほか、木と屋根の間に蜂の巣ができるとあっという間に大きくなって大変なことになります。定期的な巡回や補修は欠かせませんし、近所の人たちが目配りをして報告してあげると心強いと思います。大切なのは所有者と近隣住民が互いの家のことを思いやり、気に掛けておくこと。地域全体で空き家が迷惑な存在にならないことを心から強く願っています。

▽「もったいない」うちに行動を
一般社団法人岩手県宅地建物取引業協会一関支部
支部長 水谷みさえさん
市内で不動産会社を経営する傍ら、同支部長として市主催の空き家相談会などで空き家問題解決に取り組む。市空家等対策協議会委員。

●活用例~生かすという選択
歴史の深みを生かして魅力的な空間に。
空き家の可能性を広げている事例を紹介します。

▽DIYリノベーションで自分好みの住まいに
市地域おこし協力隊員の自宅にもなっている千厩の南小梨地区にある築150年の古民家「チダッケ」。ここを会場に、自分で家の手入れをしたいという人たち向けのDIYリノベーションワークショップが開催されました。壁に珪藻土を塗ったり窓を断熱化したりするなど、快適で自分好みの住まいにする技術を職人が指導しています。DIYリノベーションを学ぶことで、田舎らしさやスケール感が魅力の古民家の活用を促します。

▽築200年の古民家を複合ショップに
赤荻の笹谷地区で20年間ほど空き家となっていた築約200年の古民家を改修し、2024年に複合ショップ「縁日」として再生。店内には衣・食・住の道具を扱うショップとカフェを併設し、敷地内のギャラリーやワークショップができるスペースでは、作品展やトークイベント、音楽ライブ、起業支援の研修などを開催しています。地域の風土に根差した暮らしの文化を次世代へつなぐ拠点として、生かされています。

▽空き店舗を新たな交流拠点に
4月に新大町に誕生した交流拠点「BAKKE(バッケ)」。市地域おこし協力隊員(空き家プロデューサー)が、理容室だった空き店舗を借り受け、学生らと協力しながら改修作業を進め、誰もが気軽に立ち寄れる場所としてよみがえらせました。雑談を楽しんだり気分転換にゲームをしたり、空き家についての相談をしたり…利用方法は十人十色。新たな出会いや挑戦が生まれるスペースになっています。

●市の取り組みQ and A
Q.所有している空き家について相談したいのですが
A.空き家相談会に申し込んでください
空き家の売買や解体、相続に関することなど、不動産業者や司法書士などの専門家に相談できる相談会です。年3回程度開催しています。その他の日でも、市役所ではいつでも相談を受け付けていますので、気軽に相談してください。

Q.地域みんなで空き家について考えたい
A.空き家セミナーを開きませんか。市から講師を派遣します
地域協働体や自治会などからの申し込みがあれば、市職員が市民センターなどに伺い、「空き家の所有者になったらどうするか」などについてセミナーを行います。説明時間は30分程度で、その他に質問や個別での相談も受け付けます。

Q.近所に管理されていない空き家があって困っている
A.市役所本庁生活環境課に相談してください
相談を受けてから、(1)現地確認(2)所有者や相続人の調査(3)適切な管理の依頼を行います。空き家を適切に管理するのは所有者などの責務です。改善されない場合には繰り返しアプローチしていきます。

市は、令和8~12年度における空き家対策の方針を示す市空家等対策計画を策定中です。令和8年1~2月頃にパブリックコメント(意見公募)を実施する予定です。ぜひ意見をお願いします。

●相談窓口一覧
空き家に関する相談は、市が連携する以下の団体の窓口を利用してください。

▽全国空き家アドバイザー協議会岩手県一関支部が始動しました!
三浦伸太郎(しんたろう)支部長の話
空き家が増えている現状に危機感を持つ仲間と7月に県内初の支部を設立しました。本市の現状を調べた上で、家の相続や売却、住み替えの選択肢などについて実例を交えて紹介するセミナーを開催しています。今後はより多くの人に空き家問題を自分事として捉えてもらうため、市や住民らと協力・連携を深めながら、空き家の発生抑制や相談対応、DIYなどを通じた活用を進めていきます。

▽相談、セミナー開催、DIY活用
一般社団法人全国空き家アドバイザー協議会岩手県一関支部【電話】34-5280

▽不動産の売買・賃貸
岩手県宅地建物取引業協会一関支部【電話】48-3336
全日本不動産協会岩手県本部【電話】019-625-5900

▽空き家バンクの登録、利用
本庁交流推進課【電話】21-8194

▽建物の修繕・解体
岩手県建設業協会
一関支部【電話】23-3286
千厩支部【電話】53-2747
岩手県建築士会一関支部【電話】48-5118

▽建物の登記・境界の調査・確認
岩手県土地家屋調査士会【電話】019-622-1276

▽相続登記・成年後見
岩手県司法書士会【電話】0120-823-815

▽管理(見守り、庭木剪定(せんてい)、掃除など)
市シルバー人材センター【電話】26-3760

▽解体補助金、その他どこに相談したらいいか分からない場合
本庁生活環境課【電話】21-8344