- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県仙台市
- 広報紙名 : 仙台市政だより 2026年1月号
■アートの持つ力
[市長] メディアテークではアートの側面から災害を考える企画も行われているように、災害時においては、アートも大きな役割を果たしているのでは、と感じています。
[館長] 令和6年能登半島地震で被災した石川県能美(のみ)市で、障害のある方の就労支援を行う会社を設立した友人がいるのですが、その方
が地震で壊れてしまった大量の九谷焼陶磁器片をとても大切なものじゃないかと考え、廃棄せずに金継ぎや呼び継ぎという手法でつなぎ合わせて再生させているんです。自ら何かを作り出すことが人々の力になるということは、東日本大震災の時にも思っていたことですが、改めてそう感じました。
[市長] 素晴らしい取り組みですね。館長は昨年の8月にもウクライナに行かれていますね。
[館長] はい。ウクライナは3年以上の間、空襲警報が常に鳴っているような空間で人々が生活をして、学んで、生まれて、亡くなっている。そのような中で、文化芸術にどのような力があるかを調査するために行きました。演劇が大変盛んで、新作が上演されると、老若男女を問わず、たちどころに満席になるんですね。人が集まると標的にされてしまうので危険なことなんですが、それでもみんなと一緒に何かを聞く、見届ける。そのこと自体が心のシェルターになっているんだと思います。まさに鳴子で経験したことが思い出されました。
[市長] 現地での様子はSNSでも伝えてくださっていますが、大変な状況の中でもこどもたちが地下のアトリエで創作活動をしているのが非常に印象的でした。
[館長] 対面での教育ができない中で、絵画教室の先生が自分のアトリエを開放して、こどもたちがいつでも来られるような空間をつくっているんです。今、社会において自分の力を試したり大人にもまれたりといった学習機会が減っている中で、こどもたちが描いた絵を町の中に飾って、何かを作ったことを世界に問いかけることをしています。
[市長] アートがこどもたちの支えになっているのですね。
[館長] それだけでなく、アートはリハビリの中で非常に大きな役割を果たしていることが分かりました。比較的安定しているリヴィウという町では、傷ついた人たちを受け入れて、アートセラピーなどを通して心のケアも行っている。「アンブロークン」という名の治療施設なのですが、「傷ついても壊れていない」という、まさに金継ぎや呼び継ぎのような精神で傷を隠さずに、傷があるものとして社会の中で共にみんなで生きようとしているわけですね。今回、能美市で作っている呼び継ぎの皿と箸置きをウクライナに持って行って、病院や美術館の方などにお渡ししたら、話の途中でも状況を理解し、感動されていたんです。今度はウクライナで割れた器を能登の技術を使って再生してお返しし、持続的な交流をつくっていきたいのと、ここメディアテークで仙台市民の皆さんにも見ていただけるようにしたいと考えています。
[市長] とても素晴らしいものを見せていただき、涙が出てきました。東日本大震災後、仙台でも音楽や文学、アートなどの文化芸術活動が行われ、被災された方々の心の復興に大きな役割を果たしてきました。改めて、アートが持つ力の可能性の大きさを実感しています。
■笑顔あふれるまちへ
[市長] メディアテークは1月で開館から25周年を迎えます。初の館長イベントの際に、メディアテークについて「世界最高の公民館」とおっしゃっていましたが、市民の皆さんにとって、メディアテークがどのような場所でありたいとお考えですか。
[館長]よくメディアテークは建物が素晴らしいと言っていただけるのですが、中で何をやっているかが実はあまり知られていないと感じており、ここでどういうことができるかを広めないといけないと思っています。1階から7階までミルフィーユのようにいろんな人たちがそれぞれの能力や好奇心、課題、悩みを持ち込んで、混ざっている状態というのは日本の他の公共施設にないものです。そこを一つの足場にして、笑顔が少しでも増えるような場にしていきたいです。私たちが暮らしている社会の中の課題を、それぞれの立場で解決できる、和らげていけるようなきっかけを、アートやメディアを使って市民の皆さんと一緒につくっていきたいと。発信ではなく、交信、共創していく場として強めていきたいと考えています。
[市長] なるほど。そうした場にしていくためには、仕掛けも大切になってくると感じます。
[館長] そうですね。昨年の10月には、メディアテークで18歳以下の方が自由に漫画を読める「マンガテーク」という企画を行いました。今、日本では、不登校の小・中学生が約35万人、高校生が7万人近くいて、中でも宮城県は不登校生が多い地域なんですね。こどもたちがこどもらしく、自由と好奇心を持って過ごせるような場をつくることも、仕掛けの一つではないかと考えています。ほかにも、メディアテークの利用者や活動を地域とつないで、ラジオ番組を作っていきたいと思っています。
[市長] メディアテークだからこそできることがあると思いますし、館長ならではの企画も楽しみです。本市では、「世界から選ばれるまち」を目指して、青葉山エリアや勾当台・定禅寺通エリアの再整備を進めるなど、地域の魅力創出に向けた取り組みを加速していますが、それは市民の皆さんが笑顔になれるような暮らしがあってのことです。メディアテークでも、笑顔が増えるような取り組みがさらに展開されていくのかなと思うととてもワクワクします。
[館長] メディアテークが開館してからの25年で仙台のまちは大きく変わっていると思いますが、これからはもっと短いスパンで変化します。定禅寺通もそうですし、令和6年には東北大学が国際卓越研究大学第1号に認定され、外国人留学生を含めて多くの方が来仙します。ですから、仙台の大学や社会的な活動を行っている機関、企業、それからものづくりに関わっている方などの力を得ながら、仙台と世界が直結するように、私たちもパワーアップしないといけないですね。今のメディアテークで安住するのではなく、各階で学生や高齢の方や外国人がそれぞれ行っている活動をつなげて面白いことをつくったり、生涯学習のヒントになるようなことをやったりして仕掛けをつくっていきたいなと。
[市長] ありがとうございます。最後に市民の皆さんにメッセージをお願いします。
[館長] まずは皆さんにメディアテークに足を運んでいただきたいです。ふらっと来ていただいたり、あるいは事前にどういうことが楽しめるのか、どういう人と出会えるのかを調べて来ていただいたり。そして、感じたことを伝えていただきたいですね。メディアテークに何を望むのかを、いろんな立場の方から聞きたいと思っています。皆さんが笑顔で、自分の明日のエネルギーになるような深い充足した気持ちになって帰っていただける、そんな場所を一緒につくっていきたいです。
[市長] アイデアを出し合って、市民の皆さんと協働であらゆる可能性を探りながら取り組んでいきたいなと感じます。多様な発想を掛け合わせながら、仙台が彩り豊かなまちとなるよう、私も力を尽くしてまいります。本日はありがとうございました。
