- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県多賀城市
- 広報紙名 : 広報多賀城 令和7年5月号
■収蔵庫の宝物 職員のイチオシ資料紹介
□秋草文鏡
山王字北寿福寺(新田遺跡)で室町時代の武士の屋敷跡から発見された和鏡です。直径8センチメートルほどの、ちょうど片手に収まる大きさで、中央には菊花をあしらった紐(ちゅう)*を置き、界圏(かいけん)という線を廻(めぐ)らして、画面全体に涼やかな秋草が描かれています。上部には、製作された後にあけられた小さな穴が3箇所に確認できます。神社やお寺に奉納された鏡を柱に打ち付けた事例と類似しており、本資料もそうした信仰に基づく特殊な用途に使用されたものと考えられます。
日本に初めて鏡がもたらされたのは、およそ2,300年前、弥生時代前期頃です。当時の鏡は現代のような単なる姿見ではなく、特別な神秘性を帯びており、所有者の権威を示すものでした。
その後古墳時代〜奈良時代には、中国からの輸入品やそれを模倣した国産の鏡が用いられましたが、ついに平安時代後期には、日本独自の「和鏡」が成立します。弥生時代と比べてデザインや使われ方は大きく変わりましたが、室町時代の人々もまた、鏡に神秘的な力を見出していたようです。
*紐(ちゅう)…紐(ひも)などを通すためのつまみのこと
※紹介した資料は、5月末まで埋蔵文化財調査センター展示室で見ることができます。
問合せ:埋蔵文化財調査センター
【電話】368-0134