健康 市民の健康教室

■『飲酒と健康』
お正月は家族や友人と集まる機会が多い時期で、お酒を飲む場面が増える方も多いのではないでしょうか。しかし、飲酒には楽しさの裏に健康への悪影響が潜んでいます。
お酒を適量で楽しむことは、リラックス効果や社交性を高める一方で、過剰な飲酒はさまざまな健康リスクを引き起こします。アルコールは肝臓に負担をかけ、長期にわたる過剰摂取は肝硬変や肝臓がんのリスクを高めます。また、アルコールは体内でアセトアルデヒドという物質に変化し、これが発がん性物質として知られています。過剰な飲酒は口腔、咽頭、食道、肝臓、乳房、大腸など、さまざまな部位でのがんリスクを高めることが証明されています。さらに、脳への影響もあり、記憶力の低下や集中力の低下を引き起こすことがあります。それ以外にも、心臓病や高血圧、糖尿病の悪化につながることも知られています。
一方で、近年「ソバーキュリアス」というライフスタイルが注目を集めています。「ソバーキュリアス」とは、あえて飲まない選択をする人たちを指します。飲酒をしないことで、健康的な生活を送りたい、集中力を保ちたい、質の良い睡眠を得たいといった理由からこの選択をする人が増えています。
お酒を楽しむことは悪いことではありませんが、自分の健康を考え、飲む量や頻度に気を配ることが大切です。お正月を迎えるにあたり、飲酒を楽しむ方も、飲みすぎにはくれぐれもご注意ください。

■けんこうQandA 放射線治療(10)
Q:食道がんの放射線治療について教えて下さい。
A:食道がんの治療は、内視鏡による切除・外科手術・放射線治療・抗がん剤などの薬物治療があり、それらを単独または組み合わせて行います。どの治療が適しているかは、がんの進み具合や年齢、他の病気があるかどうか、そして患者さん自身の希望に基づき、医師と相談して決めます。
放射線治療は、早期のがんから切除不能の進行がんまで、多くの患者で行われています。食道がんを治すための放射線治療では、抗がん剤も一緒に投与します。
放射線治療は1日1回、週5日行い、5~6週間続けます。抗がん剤は、3~4週ごとに4~5日間連続して点滴で投与するのが一般的です。治療中には、食道炎、治療部位の皮膚炎、白血球減少などの副作用がおこることがあります。治療が終わった後も、放射線による肺炎、胸膜炎、心のう液貯留などの合併症に注意が必要です。
この治療のよい点は、食道が残り治療後の食生活が楽なことです。

■乳腺外科(10)
ー乳がん治療成績の向上(20年間で遠隔転移リスクが2割減少)ー
これまでの連載では、乳がん領域における検診の普及や治療法の進歩について説明してきました。では、これらの変化が実際に乳がんの治療成績にどのような影響を与えているのでしょうか。この疑問に答える最新の研究結果が、2024年10月12日に世界的な医学誌「ランセット」に掲載されましたので、ご紹介します。
この研究では、1990年から2009年の間に151の臨床試験に参加した約15万6千人の早期乳がん患者のデータを分析しました。その結果、2000年以降に診断された患者は、1990年代に比べて肝臓や肺などの遠隔臓器への転移リスクが約2割減少していることが判明しました。この改善は主に、検診普及による早期発見の増加と治療法の進歩によるものです。特に、リンパ節転移のない患者の割合が増加しています。
この研究は、乳がん検診の普及や治療の進歩が、実際に患者の予後改善につながっていることを示す重要な証拠となっています。この結果が、乳がんと向き合う方々に少しでも前向きな気持ちをもたらすことができれば幸いです。

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