くらし 上川崎和紙に魅せられて

■地域おこし協力隊 木村文香(きむらふみか)さん
私たちの地域に新たな風を吹き込む地域おこし協力隊。都市部から移住し、それぞれの地域の活性化に取り組む彼らは、地域の特性や文化を深く理解しながら、さまざまな活動を通じてその地域の魅力を引き出しています。
令和6年度から上川崎和紙の技術習得に励む木村文香さんもその一人です。木村さんは東京藝術大学で和紙を用いた作品制作を行い、その和紙を自分の手で一から作ってみたいという思いで協力隊に応募しました。今回、木村さんの地域おこし協力隊としての活動や、まちおこしの新たな取り組みについてご紹介します。

●地域おこし協力隊とは
地域おこし協力隊は、都市の人が地方に移り住み地域の活性化を手伝う制度です。観光や農業の支援、伝統工芸の技術継承、イベントの企画など地域ごとの課題に取り組みます。
住まいや報酬の支援もあり、地方暮らしに興味がある人にとって良いきっかけになります。協力隊の活動後、その地に定住する人も多く、新しい生き方を見つける機会にもなります。

●上川崎和紙の魅力
上川崎和紙は、二本松市の上川崎地区に伝わる手漉き和紙で、約千年の長い歴史を誇ります。楮(こうぞ)を一から栽培し、その原料を用いて作られる和紙は、全国的にも貴重な存在です。和紙伝承館と安斉和紙工房の2軒でこれらの技術が受け継がれ、福島県の重要無形文化財に指定されています。
上川崎和紙が持つ優れた伝統と技術は、地域文化の根幹であり、木村さんもその一端を担っています。

●紙漉き技術の習得
木村さんは、和紙の多様な種類や大きさを理解し、技術の習得に取り組んでいます。「晒(さらし)」と呼ばれる真っ白な和紙から、楮の色を活かした「未晒(みざらし)」まで、用途や仕上げによって印象が大きく変わります。
障子紙やランチョンマット、小物商品など、さまざまな形で活用される和紙があり、その和紙漉き技術を身につけることで、多様な和紙の表現や、商品としての展開にもつなげようと日々奮闘中です。

●楮の栽培と加工
上川崎和紙の原料となる楮は、自分たちの手で育てています。これは全国的に見ても珍しいことで、4月から冬の刈り取りまで、草刈り・肥料撒き・芽かきなど、丁寧に手をかけ続けます。
冬には枝を刈り、皮を剥ぎ、茶色い外皮を削って白い繊維だけを残し、さらに薬品で煮て柔らかくした上で、小さなゴミを一つずつ手で取り除きます。
和紙漉きの工程の中で、こんなにも“紙になる前の作業”があるとは…と、驚きながらも、素材と向き合う時間の大切さを実感しているとのことです。

●和紙伝承館での活動
木村さんは普段、和紙伝承館で勤務しています。館内には工房があり、和紙作りの作業工程の見学や和紙漉き体験ができます。予約なしで気軽にできるはがき作り体験や、小さなお子さんも楽しめるカード作り、より本格的な和紙漉きなど、様々な体験メニューのお手伝いを木村さんも行っています。
また、館内には販売コーナーもあり、さまざまな種類の和紙や工芸品、和雑貨など多数販売しています。

●新たな商品の開発
木村さんのものづくりは、「和紙の可能性を広げること」と「素材の美しさを活かすこと」を軸に展開されています。
可能性を広げる取り組みとして、和紙で“ツノ”を作るというやや奇抜な挑戦も。意外なほど丈夫で軽く、立体作品にしても独特の存在感があります。「紙でこんな形ができるの?」という驚きも大切な魅力のひとつとのことです。
主にツノのインテリア装飾やライト、キーホルダーなどの制作をしている一方、透かし模様の和紙や繊維感を活かしたブーケ型ライトでは和紙本来の美しさが引き立ちます。
今後は壁紙やタペストリーなど、暮らしに溶け込むインテリア商品も展開予定です。

■二本松で暮らす鬼婆
安達ヶ原伝説で知られる“鬼婆”がもし現代の二本松に暮らしていたら?そんな設定のもと、鬼婆の姿で市内を歩いたり商業施設に立ち寄ったりしている木村さん独自のプライベート企画。
なんでもない日常を鬼のまま過ごすという少し不思議なYouTube企画ですが、映像の中では地域の風景やお店もさりげなく紹介して、「なんだこれ?」と笑いながらも、二本松の魅力が自然と目に入る仕組みになっているとのこと。「鬼婆」としての活動を通して、伝承と現代をつなぎ、地域への愛着を深める役割を果たしています。
今後、鬼婆写真集など関連商品の販売も計画中です。木村さんのさらなる活躍にご期待ください。