- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県双葉町
- 広報紙名 : 広報ふたば 2025年3月 災害版 No.166
■松本 來夢(まつもとくるみ)さん(寺松)
居住先:福島県いわき市
▽故郷は「学ぶところ」
当町を含め原発事故により避難区域にある小中学校では、児童・生徒が故郷について学習する機会があります。震災から10年以上経った現在、すっかり定着した教育プログラムの一つとなっており、いわき市で再開した双葉北小学校と双葉中学校に通い、そうした機会を通して双葉町について学びました。
高校や大学で仲間たちと出身地について話題になったとき、生活経験による「記憶」ではなく、授業等で教わった「知識」でしか話をできないことに、表面的な日常生活は普通に送れているように見えても、周囲とは違う立ち位置にいると感じたようなこともありました。
▽「都会の殺伐さ」に鍛えられる
高校卒業後、千葉県内の大学に進学し家族と離れて生活する中、近所にある大手牛丼チェーンの店舗でアルバイトを始めましたが、皆さんもご承知の通り、そうした店はゆっくり時間を過ごす場所ではなく、仕事や移動の途中、時間を惜しんで空腹を満たすために来店されるお客様がほとんどです。特に、昼前後の繁忙時間帯では、当たり前のことではありますが、注文した料理が出てくるまでの待ち時間が少しでも長くなると気分を害されて感情的になる方も少なくありません。
働き始めた頃、対応に戸惑ったこともありましたが、今では、良い意味で鍛えられた貴重な経験と思っています。また、さまざまな立場の方と接することを通して、自身のこれからについて改めて考えるようになりました。
▽福島県内へ戻り「一念発起」
養護教諭などを目指して大学へと進みましたが、講義や見学実習などを重ねるうちギャップを感じるようになりました。
昨年夏に大学を退学していわき市の自宅へと移り、母の知人が運営している児童発達支援放課後等デイサービス施設で、ボランティアスタッフとして活動するうち、障がいを持つ子どもの保育に興味を持つようになり、いわき短期大学幼児教育科を受験して、無事、合格することができました。
▽はたちの節目と再出発
二十歳を迎え、大人への仲間入りを目前に、私の場合、進路変更を含め「さまざまな節目」となる中、昨年秋には、同年代の当町出身者とともに、間もなく解体される町内の幼稚園や学校、新しいまちづくりが進む様子などを見てまわりました。また、正月にはダルマ市と同日に行われた「はたちを祝う会」にも出席しました。
この4月から、保育士を目指し再スタートを切りますが、町民の一人として、今後どのようなかたちで復興に関われるかなどを考えるきっかけともなりました。