くらし なめがた大使小林光恵さん書きおろしエッセイ 五感でキャッチ!なめがた漫遊記第14回

■リョウミンの地
道の駅「たまつくり」で売り場を見ていたら、隣にやってきた夫婦らしき高齢者二人の女性のほうがサツマイモを手に取りながら言った。
「ここ行方はリョウミンの地ね、ふふ」
その声はアニメ「まんが日本昔ばなし」(40代以上なら知っている人が多いはず)の中でおばあさんを演じているときの俳優・市原悦子さん声にそっくりだった。お馴染みのオープニングテーマが聴こえてきそうなほど。
連れの男性の「そうだなあ」の声も、なんと同アニメで声を担当していた常田富士男さんに似ており、思わず二人の顔を見てしまった。
市原さんと常田さんは故人だけれど、隣に立つお二人のルックスもどことなく雰囲気が似ていたのだった。
《もしかして二人の精霊が、日本昔ばなしの元ネタになった地を巡っていたりして…。行方市の一部地域は千年村(千年以上にわたり、自然的社会的災害・変化を乗り越えて、生産と生活が持続的に営まれてきた集落・地域をさす)に認定されているくらい古くから人の営みがあった地なのだから、行方市の民話も少なからずあって、それ由来の作品があったかもしれないなあ》
売り場を物色しながらそんなことを考えていたら、二人はいつのまに店内からいなくなっていた。そのタイミングでひとつの疑問。
リョウミンって?たしかにそう発音していたけれど…。良民、とは思えない。領民、はありえない。だから結論は、良眠、きっと。
旅行あるいは帰省で行方に宿泊し、大変よく眠れたのではないだろうか。良眠を得るための環境は、光・音・香り・温度・湿度が適切であること。彼女に、行方は良眠の地と言わせた睡眠の状況とはどんなだったのか。そして、行方のどこだったのか。

■小林光恵さん
行方市出身。つくば市二の宮在住。
最近、ワイン熱が再燃しました。行方市のワイン用ブドウ畑産のブドウでできたワインを今度味わってみたいです。
市公式ホームページ内で「行方帰省メシ」連載中。