くらし あの日あのころ 第433回

山中樹(やまなかみき)さん
(長田在住・78歳)

◆感覚を研ぎ澄ませて
私は昭和21年、埼玉県の秩父、当時の大滝村で生まれました。生家はダムの底に沈んでしまいましたが、奥秩父の山々に囲まれた自然豊かな美しい場所でした。家のすぐ下には荒川が流れていて、夏は川遊びや魚捕りなどで遊んでいました。家には鉈などの刃物がたくさんあり、竹とんぼなど遊び道具を手作りしました。高校卒業後は日産自動車(株)に入社し、昭和42年に上三川の栃木工場で新車の生産開始に伴い、栃木に異動してきました。定年退職までの42年間で多くの人にお世話になり、楽しい思い出がたくさんあります。昭和47年に結婚して真岡に家を建てて2人の娘を育てました。家のローンや子育てなどは大変でしたが、家族で旅行をしたり、娘たちを大学まで行かせられたのは、妻がパート勤めで頑張ってくれたおかげだと感謝しています。50歳を過ぎて子育てが一段落したころには、夫婦で海外旅行も楽しめるようになりました。また、それまでの家と会社を往復するだけの生活を改め、地域に目を向けたいと思い、料理教室や美術館巡りなどに参加しました。その中の1つ「実年悠遊ゼミ」では、そば打ちなどを学びました。そこで調理室の包丁を研いだところ、当時の公民館長に頼まれて市民講座で刃物研ぎの講師を務めることになり、9年にわたり多くの人と交流がありました。市民講座の閉講後も刃物研ぎの同好会「研ごう会」を立ち上げ、今も楽しみながら学びを深めています。同じころ「めんの会」に入って今でもそばやうどんの手打ちを続けています。家では、時々魚をさばいたり、ピザや肉まんなどを手作りしたりしています。これからも、毎日の日課であるスイミングと筋トレを続けながら、刃物研ぎやそば打ち、映画鑑賞など、たくさんの楽しみを続けていきたいです。