イベント 受け継がれる夏祭り―祭りを彩る人たち―(1)

今年も夏祭りが近づいてきました。祭りが持つ独特の熱気と高揚感は、こどもはもちろん大人になっても私たちの心を捉えて離しません。
響き渡る勇壮な神輿の掛け声や軽快な囃子の音色、訪れた人々の歓声は、老若男女問わず誰もが心踊らされることでしょう。屋台から漂う香ばしい匂いや、目を輝かせ会場を駆け回るこどもの姿は、私たちの中にある懐かしい記憶を鮮やかに蘇らせてくれます。
時代の変化とともに、祭りの形態も変わりつつありますが、根底にある「人が集まり、世代を超えて楽しみを分かち合う精神」は、決して変わることはありません。
市内には、各地域に祭りが根付いており、地域の文化として長く受け継がれてきました。会場を華やかに彩る人、運営を縁の下で支える人など、それぞれの立場で歴史をつないでいます。

【伝統と継承に悩みながらも夢中で向き合ってきた】
幼少期から太鼓を叩く環境で育った。小学生の頃から地元の夏祭りに参加し、高校生の頃には大人に交じり太鼓の叩き合い「ヒッカセ」に参加した。参加する人が今より少なかったので、連続で20~30分叩くのは当たり前だった。それが故にヒッカセへの想いは強い。20代になり、師匠から「1人の身体じゃないのだから、無理をするな」と言われたことが1番印象に残っている。会の一員として認められ、やっと一人前になれたと実感した。
その後は、加須囃子を後世につなげるため、積極的にこどもの指導に関わった。こどもでも叩けるよう譜面のアレンジを試みたが、伝統を重んじる先輩から厳しい言葉もあった。「みんな加須囃子を大切に想う気持ちは同じなんだと思う」と苦労を重ね、伝統との調和が取れた指導手法を確立し、周囲からも同意を得ることができた。また、他の地区に出向き、惜しむことなく技術を伝承した。その手法や譜面は、今もなお市内各地で引き継がれている。
昭和55年に武州加須囃子保存会が設立され、徐々に参加する町内が増えていった。この頃から、市内の小中学校のクラブ活動でも指導を始め、より広くに魅力を伝えている。指導を受けたこどもは千人を超え、孫弟子の数は把握できないほど。「今のこどもたちは一生懸命で、みんな上手だよ」と笑うが、鈴木さんたちが積み重ねてきた結果ではないだろうか。振り返ると「ずっと夢中だった」と照れ笑いする鈴木さんから、伝統を継承していく固い意志と地域を愛する想いが伝わってきた。

◆武州加須囃子保存会
会長 鈴木孝始(たかし)さん
9町内に支部がある武州加須囃子保存会の4代目会長を平成26年から務め、長年に渡り地域イベントや市内の小中学校での指導など、加須囃子の育成に尽力

【神輿の楽しさと魅力を次世代に】
騎西夏まつりに参加するまで、神輿を担いだ経験はほとんどなかったが、神輿好きの父の隣で小さい頃から見てきたせいか、自然にのめり込んでいった。沿道からの歓声と仲間との一体感、担ぎ終えた達成感で、身体の痛みを忘れるほど、高揚が収まらなかった。当初は「女みこしの會」としてスタートし、平成13年に騎西地域の象徴であるフジの花の色と祭りを彩る意味を込めて「紫彩會」と命名。その後も、県内外問わず各地域の祭りに参加し、交流を深めている。會長に就任してからは、會を次の世代につなぐ強い想いのもと、神輿の魅力の伝承を心掛けている。最近では、こどもの頃から参加している會員が、自分のこどもも参加させるなど、想いは着実に伝わっていると実感することも。
平成26年に念願だった會の万燈神輿が完成した。神輿はより重く感じ、たくさんの人の想いが伝わってくるようだった。「これからも玉敷神社の大神輿と一緒に騎西夏まつりを盛り上げていきたい」と意気込む。今年も、自慢の神輿を活気良く担ぐ姿が待ち遠しい。

◆武州騎西女みこしの會 紫彩會(しさいかい)
會長 角田いずみさん
女みこし立ち上げメンバーの一人として、約30年前から「騎西夏まつり」に参加。平成19年に會長に就任。年間を通じて県内外の祭りに参加し、精力的に活動

【地域一丸で「すべては未来のために」】
今では地域のこどもから大人まで楽しみにしているSummer Festaだが、その始まりは前途多難だった。複数の団体で構成された組織は、互いに譲れず衝突することもあった。「今にして思えば、それだけ皆が本気だったのだろう」。次第に若い人も加わり、斬新なアイディアがたくさん生まれた。変化を恐れる声もあったが、実現するためにみんなで考え、市内外で大人気の「稲穂戦隊スイハンジャー」もそこから誕生した。
そんな組織だからか、人が人を呼び、協力者が増え、地域の絆はさらに強くなっていった。地元の中学生や高校生など、誰でも参加できるのが、Summer Festaの特色だ。小学生がデザインしたうちわ絵の表彰や、来場者みんなが参加できる個性的なステージイベントで毎年盛り上がりを見せる。祭りの内容は変われど、変わらないのはスタート時からのコンセプト「すべては未来のために」。これからも未来を担う仲間と一緒に、Summer Festaは歩み続けていくと感じられた。

◆商工会Summer Festa実施委員会
柴田一義さん 服部勝良さん 倉上幸男さん
毎年、北川辺地域で開催する「商工会S u m m e r Festa」を盛り上げるため、実施内容の企画から当日の準備まで幅広く活動

【「地元に居場所を作ってあげたい」が原動力】
かつて行われていた花火大会がなくなり、「地域の人にとっての居場所づくりが必要」と考えたのがキッカケだった。共感し協力してくれる仲間がたくさん集まったが、夏まつりを一から作り上げるのは困難の連続だった。しかし、「大塚さんたちがやるなら」と、多くの地元企業も賛同してくれた。最初は会場のテントも一つ一つ自分たちで設営した。もちろん、ステージや照明、提灯の設置も仲間たちとの手作業だ。必死に準備した甲斐あって、会場は来場者の笑顔で溢れ返った。その景色は、今でも鮮明に覚えている。
年々、まつりは盛大さを増し、最近は市外から訪れる人も増えた。名物であるクライマックスの花火は、地域が誇る夏の風物詩として定着している。地元からは、地域の拠りどころとして、さらなる賑わいの創出が期待されている。「今年は、商工会青年部のOBがサポーターとして協力してくれる」「継続するのは簡単ではないけれど、クライマックスの花火を見るたびに、これからも大切につないでいきたいと思う」。地域の絆で、これからも熱い夏まつりはつながっていくだろう。

◆おおとね商工夏まつり実行委員会
実行委員長 大塚勝正さん
今年で18回目を迎える「おおとね商工夏まつり」の立ち上げから会の中心として精力的に活動してきたひとり