文化 郷土を知り、郷土を愛する「志木市 歴史さんぽ」-執筆・協力 志木のまち案内人の会-

■第62回 市指定文化財 北美圦樋(きたみいりひ)と篭嶌門樋(かごしまもんぴ)
江戸時代、宗岡村は大水に備えて村全体を堤防(惣囲堤(そうがこいづつみ))で囲んでいました。江戸時代の絵図には堤防に12か所の樋門(ひもん)が描かれています。
樋門は圦(いり)、圦樋(いりひ)、門樋(もんぴ)などとも呼ばれ、水田などからの排水を川に流し、大水のときには洪水の流入を防ぐ設備です。市内に現存する3基の樋門のうち、北美圦樋と篭嶌門樋が市指定文化財となっています。
北美圦樋は中宗岡の宗岡第四小学校前の旧堤防にあり、明治32年(1899)に木製からレンガ造(づくり)に改築され、水門の両側の翼壁など堂々とした外観が特徴です。ハンドル操作で上下に開閉するゲートがありましたが現在は失われています。
篭嶌門樋は下宗岡の宗岡第二中学校付近の旧堤防にあり、明治28年(1895)に木製からアーチ形の石造(いしづくり)に改築されました。堤外側(中学校側)に川の水位によって自動で開閉する観音開きの扉がありましたが、現在は失われ、その前面に昇降式の鉄製ゲートが設置されています。また、そのゲートに隠れていますが、壁面の石に「篭嶌門樋」の文字が刻まれています。現存する石造りのアーチ形門樋としては県内唯一のものです。
これらの樋門には、レンガ造と石造の高い技術に加え、知恵と、そして美意識が込められており、当時の人々の心意気が強く感じられます。