くらし 〔巻頭記事〕今、北本の「サクラ」が危ない

~クビアカツヤカミキリからサクラを守るためにできること~
現在、市内で特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」による木の食害が広がりつつあります。
サクラをはじめとしたバラ科樹木を枯らすこの昆虫による被害の状況と、防止策等についてお伝えします。

■クビアカツヤカミキリとは
サクラやウメ、モモなどのバラ科樹木に寄生し、木の中を食い荒らす外来昆虫です。特定外来生物に指定されており、生きたまま「持ち運ぶ」「飼う」「別の場所に放す」などが法律で禁止されています。被害が進行すると木が枯れてしまうため、観光や農業に深刻な影響を及ぼします。埼玉県では63市町村中、45市町村で被害が確認(令和7年3月末時点)されており、被害を受け枯死したサクラ等の大規模な伐採等に踏み切らざるをえない地域も出ています。

■北本市でもすでに500本近い被害が発生
令和5年に高尾さくら公園で被害が初確認されて以降、文化センターや総合公園、子供公園など、市内全域で急速に被害が拡大しています。枯死に至った木も18本あり、早急かつ継続的な防除対策が必要です。
『市内公共施設のサクラ被害状況 498本1532本』

■被害を受けるとどうなる?
◇卵を産み付ける
時期:6月~8月ごろ
成虫の発生時期は6月~8月頃で、幹や枝の樹皮に産卵する。一匹のメスが1,000個以上産卵することもあり、繁殖力が強い。成虫は越冬せず、寿命は2週間~1か月。

◇幹を食害する
時期:5月~10月ごろ
孵(かえ)った幼虫は木の中へ潜り、2~3年かけて成長する。幼虫は春から秋にかけ、かりんとう状の「フラス」(フンと木くずが混ざったもの)を大量に排出する。
※被害が軽度のうちに対策することが重要。

◇木が枯れる
何匹もの幼虫に幹の内部を食い荒らされた木はやがて弱り、枯死してしまう。枯死した木は、落枝や倒木のおそれがあるため伐採が必要。

■見つけたらすぐに駆除・対策を
一人ひとりの迅速な駆除が、北本のサクラを守る力になります。
身近なサクラ・ウメ・モモ・スモモの木をチェック!

◇フラスや成虫を見つけたら直ちに駆除し、市へ報告!
特に成虫を発見した場合は、その場で市販の殺虫剤を噴霧、踏みつぶすなどして駆除してください。合わせて、専用フォームへ被害状況の情報をお寄せください。スマートフォンからも簡単に報告できます。
(報告フォームは本紙の二次元コード参照)

◇自宅の樹木からフラスが出ていたら駆除用品をお渡しします
市では、自宅の敷地にある樹木に被害があった場合、その所有者に駆除用品を配布しています。
配布を希望する人は、環境課窓口またはホームページから申請を行ってください。
詳細は市ホームページをご確認ください。(本紙の二次元コード参照)

まち全体でクビアカツヤカミキリの被害を減らしていくためには、市民の皆さんの協力が必要です。フラスや成虫の発見・防除にご協力をお願いします。
(環境課 佐藤健市課長)

クビアカツヤカミキリへの対策は、時期や被害の度合いによって異なります。主な対処を下の図にまとめました。
市では、時期や被害木の状態に合わせ、各種の防除対策を講じていきます。

■国指定天然記念物 石戸蒲ザクラにも被害が発生!!
~古木ゆえに狙われる・対策が限られる~
市では石戸蒲ザクラのクビアカツヤカミキリによる被害を防ぐため、今年度は特に見回りによる監視体制を強化していましたが、8月18日に蒲ザクラの枝からフラスの噴出が見つかり、被害が初確認されました。樹木医や県担当者と対策を協議し、翌日には薬剤散布などを行い、駆除ができました。その後、新たに4か所からフラスの噴出を確認しましたが、全て初期段階で幼虫の駆除をすることができました。
市内各所に植えられている蒲ザクラのクローンである「後継樹」への被害が確認されていないことから、本来サクラの中では狙われにくい樹種であると考えられます。しかし、蒲ザクラは樹齢800年といわれる老木であり、被害を受けてしまったようです。
若く健康な樹木であれば有効な対策となる薬剤の樹幹注入は、樹勢の衰えが見られる蒲ザクラでは行えません。引き続き、樹勢回復と薬剤噴霧による予防・監視を徹底し、新たな被害が確認された場合には、スプレー散布による地道な駆除を行っていきます。
飛来するクビアカツヤカミキリから蒲ザクラを単独で保護する事は困難です。北本のシンボルである「石戸蒲ザクラ」を保護するためにも、まち全体での対策にご協力をお願いします。

問合せ:文化財保護課
【電話】594-5566

■クビアカツヤカミキリの被害を拡大させないためには、早期発見・早期防除が何よりも大切です。
埼玉県でのクビアカツヤカミキリ被害は、平成25年に初めて確認されてから、令和7年3月までの約12年で、県内45市町村で確認されています。クビアカツヤカミキリは繁殖力が極めて旺盛なため、成虫やフラスを発見したら、すぐに対処しないと被害が急速に拡大してしまいます。市民の皆様におかれましては、市内のクビアカツヤカミキリ被害の状況についてご理解いただき、被害の早期発見と早期防除にぜひともご協力いただけますようお願い申し上げます。

(埼玉県環境科学国際センター 研究推進室 副室長 三輪誠さん)

問合せ:環境課環境政策・保全担当
【電話】594-5526