くらし 特集 認知症を知る・支える・繋がる(2)

■「認知症」と向き合う現場の声を聴く

●ニュータウンふくしプラザ
村岡 満子(むらおかみつこ)さん
13年前からニュータウンふくしプラザで勤務。今年度には鳩山町認知症地域支援推進員に任命。認知症サポーター養成講座のキャラバンメイトも務める。

▽ニュータウンふくしプラザではどのような取り組みを行っていますか?
地域の方がどなたでも参加できるサロン活動を行っています。ボランティアの方が中心となって来所された方のお話を伺ったり、体操や音楽、夏の時期にはこども向けの学習支援のサロンも行っています。
また、相談も受け付けており、さまざまな相談もお受けしています。受けた相談を元に必要に応じて関係機関に繋げます。いきなり相談という形はハードルが高い方もいらっしゃると思うので、サロンを通して相談しやすい雰囲気づくりを目指しています。

▽相談者の方に安心してもらうためには?
漠然とした不安を持っている人、どのようなところに行ったら良いのか分からない人、一人ひとりの話をよく聞くことを大切にしています。
不安を抱えてここに相談に来ている方なので、自分でも何を相談したいのかわからなくなる人も多いです。まずは、よく話を聞いてその人が本当に困っていることを見極めるようにしています。また、家族だけで抱え込まず、行政やふくしプラザのような機関、友人や他の人に相談することが一番大切です。周りの方の理解と協力を求めることも大事ですということも伝えています。

▽認知症について知ってほしいこととは?
認知症になると本人がまず気付くことが多いです。本人が一番不安だということを理解して、周りの方には寄り添ってほしいです。
また、認知症医療機関の早期受診を勧めてはいますが、受診までの葛藤はあると思います。無理やり受診するのではなく、まずは、その時の気持ちを周りの人が受け止めることが大切です。
認知症は誰でもなりうるもので、その人らしさは失われません。否定をするのではなく、肯定する気持ちを持つことや「ダメ」より「できたね」という言葉が増えたらいいなと思います。
認知症の方は今まで出来ていたことが出来なくなったりしますが、一つできなくなったからと言って全てが出来なくなるわけではありません。周りで見ている人は心配で手を出しすぎてしまうこともありますが、ゆっくり見守ることが大切です。困ったときに手伝うくらいのさりげない支援が丁度いいと思います。認知症の症状もその人の個性です。
認知症は特別なものではないことを色々な方に知ってほしいです。

●愛の家グループホーム鳩山 施設長
銅 直紀(どうなおき)さん
平成26年メディカル・ケア・サービス株式会社に入社。令和5年から愛の家グループホーム鳩山に在籍し、埼玉県知事から令和元年度に介護の魅力PR隊に任命され、各地で講演会などにも出演。

▽認知症の方と関わる際に普段から意識していることは?
認知症だからといって特別意識していることはありません。一人の人として接しています。その人が認知症だからではなく、お話が好きな人、集団行動が苦手な人など、その人それぞれの個性や性格を尊重してそれに合わせて接しています。
また、人によっては忘れてしまう程度も変わるので、会話の中で言葉を省かないようにいつも丁寧に説明しています。一回言ったからではなくて、同じことを何度でも説明しています。

▽安心して過ごしてもらうための関係作りとは?
嫌なことは記憶に残りがちなので、自分がされて嫌なことはしないというのを心掛けています。単に介助をしないということではなく、担当者を変えたり、時間を置いて対応する等、利用者さんが嫌な気分にならずに過ごせる方法を日々模索しています。

▽認知症の方との関わりの中で心に残っている出来事は?
ある時、業務で掃除をしていた際にテレビで「あなたの生きがいはなんですか」という内容が放映されていました。近くにいた利用者さんに「あなたの生きがいはなんですか」と聞いたところ、はにかみながら「お兄ちゃんたちがね、毎日元気でここに来てくれていることだよ」と言われたことです。10年前の出来事ですが、今でもとてもうれしいです。

▽認知症の方と関わるうえで地域や社会に伝えたいことは?
私は認知症をコロナに例えています。なる人もいればならない人もいて、軽症で済む人もいれば重症になってしまう人もいる。認知症も同じです。コロナと同じで初めは何もわからなくて恐怖を感じていましたが、知識があれば怖くないです。偏見を持たないことから始めていってほしいと思います。認知症の人を見かけても「あの人変だな」とは思わず、「あの人大丈夫かな」と思うようにしてほしいです。
認知症になったからと言って何もできなくなるわけではありません。悲観的にならず、早め早めの対応が大切なので、早期受診を推奨しています。認知症を認めたくなかったり、隠してしまったりすると、どんどん認知症が進行してしまいます。家族で抱え込まずに、行政や地域包括支援センターなど色々な人に相談したり、頼ったりしてほしいです。