くらし 新 地域おこし協力隊通信 第22回

各隊員の活動を詳しくお伝えする地域おこし協力隊通信。第22回は平野敏満さんの活動を紹介します。

■着任当時の状況
私は令和6年2月に小鹿野町の地域おこし協力隊員に着任しました。早いもので、協力隊任期の半分余りが経過しました。
私の小鹿野町での協力隊員としての任務は「空き家対策」です。もともと空き家対策に必要な知識や法律資格はありましたが、そうかと言って、よそ者が突然やってきて「私が小鹿野町の空き家を何とかします」といくら声高に叫んでもすぐにどうなるというものでもありませんでした。
地域おこし協力隊員というのは、地域活動をするというだけではなく、その地域に移住・定住するという側面を合わせ持っています。つまり地域の一員として、その地域に根付いていくということも任務の一つと言うことができます。むしろ地域に根付いて活動の基盤ができなければ、いくら力んでみたところで活動は空回りして実行性がありません。したがって、これが活動するに当たっての第一関門ということができると思います。

■基本は空き家バンク登録
着任して一年目は、小鹿野町の空き家の状況がいかに深刻であるかを知ってもらい、空き家を放置するとどんな不利益があるか、ということを周知させるために、チラシの配布、空き家相談会の実施、セミナーの開催などを精力的に行いました。もちろん、空き家を所有していることは不利益になるというだけでなく、利活用や売買することによって収益に繋がることも周知しました。
そして、なるべく空き家バンク登録してもらうよう、空き家所有者に電話し、さらに通知書を送付して空き家バンク登録を促すようにしました。これが功を奏して、2年目は空き家相談も増加し、空き家バンク登録申請の増加に繋がりました。

■小鹿野町町民の権利意識
さて、以下に、これまで協力隊員として、実際に現場で活動してきて感じたことを述べてみたいと思います。やや耳が痛いかもしれませんが、ご容赦ください。
まず、小鹿野町のみなさんの権利意識の低さを挙げなければなりません。その原因としては、地理的、歴史的な背景が影響していると考えられますが、例えば契約行為一つをとっても、契約書を作成しないで口約束だけで契約を締結している場面が見受けられます。裏を返せば、お互いの信頼関係に基づいているということもできますが、後に言った言わないでトラブルになったとき、証明のしようがありません。ぜひ、不動産の売買や賃貸、お金や物の貸し借り等の際には、契約書を作るようにしましょう。

■本当は幸福な小鹿野の人たち
小鹿野町に生まれ小鹿野町で育った人たちはあまり自分の幸せに気がついていないかもしれません。
都会の垢にまみれ、従業員への給料、借入金の返済、毎月の高い家賃の支払い等に追われる人生を考えたことがあるでしょうか。これがないだけでも、多くの収入はなくとも、どれほど穏やかな生活ができることでしょう。
また、豊かな自然を満喫しその中で気のおけない友人と過ごせる時間は何事にも代えがたいと思いませんか。
私は東京で事務所を経営して、支払いに追われる日々を送っていました。決して誇張ではなく「もはやこれまで」と言う場面にも何度か直面しました。いま思うとぞっとしますが、小鹿野町に移住してきてそれもなくなり、地域の人たちとふれあいながら暮らせる人生のありがたさを味わって生きています。