- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県千葉市
- 広報紙名 : ちば市政だより 令和7年4月号
■堀川理万子『海のアトリエ』
食事のあとの読書の時間。室内はランプの灯りによって照らされ、じんわりと広がる黄色の光が、本棚の色とりどりの背表紙と読書にふける二人の肩先をやわらかく撫でています。そっとページをめくる音だけが聞こえるような、心地よい静けさを感じる一場面です。
堀川理万子さんの絵本『海のアトリエ』は、海の近くのアトリエに暮らす“絵描きさん”のもとでひと夏を過ごした女の子の思い出を、鮮やかに描き出した作品です。絵描きさんのモデルとなったのは堀川さんが子どもの頃に絵を教わった先生。「子どもを子どもあつかいしない、かっこいい大人だった」というその先生の姿は、物語の中の絵描きさんに重ねられています。互いに本の世界に没頭する自由を尊重しつつ、さりげなく見守る絵描きさんのあたたかさが、やわらかな水彩の筆づかいに宿っているようです。
本作はスロバキアの首都ブラチスラバで2年に一度開催される世界最大規模の絵本原画コンクール「第29回ブラチスラバ世界絵本原画展」に日本代表作品の一つとして出品されました。展覧会では、こちらを含む日本代表作家10組の出品作品と、世界中から集めたコンクール受賞作品を一堂にご紹介します。
◇山下学芸員
「ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード」(5月18日(日曜日)まで)にて展示中です。
問い合わせ:市美術館
【電話】221-2311【FAX】221-2316