文化 千葉開府900年への道

■九、千葉の未来へ「ちから、ひらく。」
千葉開府900年記念事業の先行期間が4月から始まります。同じく4月から本会期を迎える千葉国際芸術祭2025のコンセプト「ちから、ひらく。」には、「多様な“ち”(千葉、地、力…など)から創造活動をはじめる」という意味が込められています。
千葉常胤(つねたね)の息子たちは、父の所領を受け継いで全国各地へ勢力を広げました。六男の胤頼(たねより)は現在の千葉県香取郡東庄町付近に所領を与えられ、東氏(とうし)を名乗りました。東氏の一族には、勅撰(ちょくせん)歌人がたくさんいたことが知られています。天皇の命で作られた勅撰和歌集に歌が載る勅撰歌人になることは、大変名誉なこととされていました。このことから、東氏には和歌に表される豊かな文化や高い教養が代々継承されたことがうかがえます。胤頼の子孫の東常縁(とうのつねより)は、関東における戦国時代の幕開けとなった享徳(きょうとく)の乱(らん)で活躍した優れた武将であっただけではなく、歌人としても有名でした。平安時代にできた「古今和歌集」は、昔の人にとっての和歌の教科書のようなものでしたが、常縁は古今和歌集の解釈を中心とした歌学の説をまとめ、秘伝として弟子に授けたので「古今伝授(こきんでんじゅ)」の祖としても名を残しています。東氏が本拠を移した現在の岐阜県郡上(ぐじょう)市には、庭園や記念館などが一体となった「古今伝授の里フィールドミュージアム」が整備され、東氏がもたらした文化を今に伝えています。
各地に勢力を拡大した常胤の息子たちは、その土地の状況に応じた地域の発展に努め人材や文化を育みました。豊かな未来に向けて「ちから、ひらく。」契機となるよう、千葉開府900年記念事業を展開していきます。