くらし 特集「くらしを、守る。」(1)

市内では、イノシシやカラス、アライグマ、ハクビシンなどの有害鳥獣による被害が確認されています。田畑が荒らされたり、農作物が食べられたりする被害のほか、庭や公園などの掘り起こしや車との接触が起きています。
有害鳥獣被害の増加の主な原因は、高齢化などにより十分に管理することのできない山林や農地が増え、そういった場所へ有害鳥獣が棲(す)みついたことや、餌を求めて住宅地に出没しやすくなったことなどがあげられます。
市では、木更津猟友会袖ケ浦市有害鳥獣駆除隊や地域対策組織と連携し、有害鳥獣被害の削減に取り組んでいます。
今月号では、有害鳥獣被害から地域を守るために活動している駆除隊や地域対策組織の皆さんに、取組みや想いを伺いました。

■有害鳥獣駆除隊・地域対策組織の皆さんにお話を聞きました
・有害鳥獣駆除隊…猟銃やわなを使用し、市内全域の有害鳥獣駆除を行う組織です。
・地域対策組織…わなを使用し、地域ぐるみで有害獣駆除を行う組織です。

◆木更津猟友会 袖ケ浦市有害鳥獣駆除隊 中山俊彦隊長
◇有害鳥獣駆除隊の活動
駆除隊は、わなを仕掛けてイノシシ・アライグマなどの捕獲・処分や、猟銃を使用したカラスの駆除などを行っています。市内では、とくにイノシシの被害が多く、田畑を荒らされたり、住宅の植え込みを掘られたり、車とぶつかったりすることがあります。有害獣に遭遇して怖いと感じることも、被害の一つだと言えると思います。
7年前に隊長になってからは、わなを管理するためのチェックリストを作成したり、有害鳥獣の捕獲状況を可視化するためにデータベース化したりするなど、できる限り工夫して活動してきました。せっかくやるなら、効率よく楽しくやりたいですからね。

◇地域対策組織との連携
最近は、市内各地区に地域対策組織が発足し、活動してくれるようになりました。その結果、駆除隊が管理するわなの数が減り、わなの補修や周辺の草刈りに手が回るようになり、とても助かっています。
市内の有害鳥獣の数は、地区によって増減があり、対策を強化した地区で被害が減ると、今度はその隣の地区で増えることがよくあります。そのため、地域対策組織の輪が広がり、地域全体で対策に取り組めるようになるといいなと思っています。

◇活動に興味を持ってほしい
今後は、一緒に活動してくれる仲間が増えることを期待しています。近隣市では、若い世代や女性が活躍している地域もあるので、まずは、この活動に興味を持ってもらえたらいいですね。

◇動物と共存できる環境を作りたい
市民の皆さんには、鳥獣に餌を与えないよう気を付けてほしいです。本来は山にいた動物が生活圏に出てきてしまっているのは、餌があるからです。動物は悪者ではなく、人間が呼び寄せてしまっていることを理解し、ごみの収集日を守るなど、一人ひとりが日常生活で少しでも意識して行動してもらえたらと思っています。動物と共存できる環境を、皆さんと作っていきたいですね。

◆地域対策組織の活動
◇下宮田区有害獣対策協議会
石川和利さん
下宮田区では、平成25年頃からイノシシの被害が増加しており、市の農林振興課に相談した際に、他市では地域対策組織を編成して駆除活動をしていることを教えてもらいました。被害が増える一方でしたので、下宮田でもやってみようと、市内で初めての協議会を立ち上げました。

◇下宮田区有害獣対策協議会
会長 石川文雄さん
とくに田んぼの被害が深刻で、早急に対策をしなければいけませんでした。
協議会の立ち上げから5年間で、300頭近くの有害獣を捕獲しました。もし活動をしていなかったら、300頭では効かない数の有害獣が増えていたのではと思います。今後も引き続き活動して、被害を減らしていけたらと思っています。

◇玉野区有害獣対策協議会
会長 髙橋勲さん
玉野区では、市内で初めて田畑への金網柵の設置に取り組みました。しかし、数年後には、有害獣が柵を破ったり曲げたりして侵入するようになってしまい、対策の強化を図るために、下宮田区にならって協議会を立ち上げました。
これからの時期は、田んぼにいるオタマジャクシを狙ったアライグマの被害も増えてきます。有害獣が田畑を荒らすのは一瞬ですが、それを元の状態に戻すには、何日もかかります。近所の方から「被害が減ったよ、ありがとう。」と声をかけてもらえた時は、とても嬉しく、やりがいを感じましたね。

◇大竹区有害獣対策協議会
会長 大坪政次さん
農地では、有害獣に田んぼの土手が崩されて水が流れ出たり、用水路を崩されて詰まってしまったりする被害があります。また、住宅地では庭の手入れをした直後に荒らされることも多々あります。2~3日連続で同じ場所に現れることがあるのですが、そこにすぐわなを仕掛けても捕獲できないのが難しいところです。駆除隊の方からは、わなをむやみに移動させず、餌場として認識させることが大切だとアドバイスをもらいました。

◇川原井有害獣対策協議会
庶務・会計 鈴木和彦さん
川原井区は、37名のメンバーで活動しています。地区の面積が広いので、4つのブロックに分かれてわなの管理などをしています。川原井区の住民向けに、年に2回広報紙を発行し、私たちの活動を知ってもらうとともに、地域ぐるみで有害獣の被害をなくせるよう取り組んでいるところです。

◇野田区有害獣対策協議会
会長 仲田秀明さん
協議会を立ち上げたきっかけは、通学路や庭先にイノシシなどが現れ、子どもたちが怖い思いをするのを目の当たりにしたことです。野田区の皆さんと協力し、多くの方からの指導を受け、活動してきました。
実際に「最近はイノシシの姿を見なくなったよ。」といった声をかけてもらうことが多く、効果を実感しています。子どもたちも安心感を持ってくれているようなので、体が元気なうちは活動を続けていきたいですね。