文化 うめすけの多古町 探訪

◆「小さなゲートウェイ」
先月の約束通り、飯笹の坂を上って戻りましょう。十余三を過ぎた辺りは登戸台、西へ向かうと五辻、鷹ノ巣と続きます。土地柄が似ていることに加え親戚もあり、私にとっては親しみのある地域です。そこに70ヘクタールもの国際航空物流拠点ができると聞いた時は、本当に驚きました。しかしあくまで建設予定地、云々(うんぬん)するのは時期尚早でしょう。
そこで今回は、もう少し先へ進みます。五辻・鷹ノ巣の先といえば一鍬田、多古町西端の、綿毛(種子)をもったタンポポみたいな形の地域です。今は空港で分断されていますが昔は成田方面に道が通っていて、台地の中のオアシスといった趣の村だったようです。
一鍬田には多古第二小学校の分校があったため、以前から興味を持っておりました。距離を測れば第二小より十余三小のほうが近く、従弟(いとこ)のように感じていたのです。丁度いい機会だと、取材がてら訪ねてみました。
空港拡張に伴う全戸移転が決まり、おそらく昔日(せきじつ)の面影は薄れてしまったでしょう。それでも、何世代にもわたって人が暮らしてきた息遣いは充分残っていました。それぞれの歴史と思い出を胸に移転してくださる皆さまへ、衷心(ちゅうしん)より謝意を表する次第です。
分校は元々お寺の境内だったらしく、すでに校舎も校庭もない中、校門は使える状態で佇んでいました。お寺の門を併用せず、子どもたちのゲートウェイを作る……改めて、素晴らしい施策だったと敬服しております。小学校は社会と大人への入口にほかなりません。郷里を失う卒業生にはお叱りを受けそうですが、ずっと続く道の初めに小さな門を通った大きな一歩は、ちょっぴりうらやましくもありますね。
上記で、好きな花を比喩に用いました。末筆ながら、移転される皆さまが、新天地でも健やかにお過ごしいただくよう祈念申し上げます。