健康 長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾[第54回]

明けましておめでとうございます。
認知症の人には、不安やうつ、幻覚や妄想、興奮状態などさまざまな精神症状が合併することがあります。今回は認知症に伴う精神症状で、もっともよく認められるせん妄状態をご紹介しましょう。
こんなケースがありました。

◆75歳男性
高校卒業後、会社で事務職を60歳定年まで勤めました。27歳で結婚し、子供は2人。現在は2歳年下の妻と二人暮らしです。3年ほど前からもの忘れが認められるようになり、1年ほど前にアルツハイマー型認知症と診断されました。2ヶ月前から、夕方からイライラするようになり、夜間になると誰もいないのに人がいると訴えたり、20年前に亡くなった母親がいないと探したりするようになりました。

せん妄状態では、夕方から夜間にかけて、認知機能障害が悪化したり、精神症状が認められるようになったりします。このケースでもせん妄状態が合併している可能性があります。
ここでせん妄状態が生じるメカニズムを考えてみましょう。私たちの脳は、とても複雑な構造をしており、各部位がさまざまな機能を担っています。これは私たちの脳の機能と認知機能の模式図です。

例えば、アルツハイマー型認知症のために記憶を司っている海馬の部分の神経細胞が機能低下・減少すると記憶障害が出てきます。また脳梗塞などで言語を司っている言語野が障害されると言語障害が認められるようになります。こうした脳の神経細胞の機能低下・減少に伴い、もの忘れなどの認知機能障害が出てくるのが、アルツハイマー型認知症、血管性認知症などの認知症原因疾患による認知症です。これに対して、せん妄状態とは私たちの脳の活動を支えている土台の部分、すなわち覚醒状態や全身状態が崩れることによって生じてきます。せん妄状態の原因の土台の崩れ(覚醒状態や全身状態の悪化)は改善可能なことも多く、原因を探し出して、介入できると認知症の症状が大きく改善できることがあります。
せん妄状態の原因でもっとも多いのは薬の副作用です。外来でよくあるのは、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるタイプの睡眠導入剤や抗不安薬によるせん妄状態です。ベンゾジアゼピン系の薬剤は、成人の約2割に処方されているという報告もあるほどたくさん処方されています。脳の機能がしっかりしていると副作用は目立たないのですが、認知症などで脳の機能が低下するとせん妄状態などの副作用が出現することがあるのです。ベンゾジアゼピン系の精神安定剤は、依存性も強く、簡単に減量、中止が難しいことが多いので、主治医とよく相談して対応しましょう。

■上野先生を講師に迎えた「認知症学習会」を毎月開催しています。
ぜひご参加ください。
日時:1月21日(水)15時〜16時(要事前申込)
場所:保健センター

問い合わせ:(申込先)福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116