健康 長南町認知症サポート医〔上野秀樹先生〕の認知症見立て塾 [第45回]

前回、認知症の症状を適切にひもとくことの重要性をお話ししました。認知症の症状にはもの忘れや周囲の状況がわからなくなる見当識障害、理解力・判断力の低下などの認知機能障害の他に、不安やうつ状態、幻覚や妄想、興奮状態などの精神症状があります。まず、認知機能障害の程度を判断します。簡単な方法は、見当識障害の程度を見極めることです。私たちはさまざまな感覚器官を利用して、周囲の状況を把握しながら生活しています。脳の機能が低下することで、はじめに認められるようになるのは時間に関する見当識障害、すなわち自分の周囲の時間的状況を把握する能力の低下です。具体的には、今日が何年何月何日何曜日で、今の季節がなんなのかがわからなくなります。何度も曜日や日付を確認したり、ゴミ出しの日を間違えたりするようになります。さらに認知機能障害が進行すると場所に関する見当識障害、すなわち自分の周囲の場所的な状況を把握する能力が低下します。具体的には自分がどこにいるのかわからなくなり、自宅にいるにも関わらず、自分の家に帰りたいと言い出したり、今いる場所がわからなくなったりします。さらに認知機能障害が進行すると人に関する見当識障害が認められるようになります。自分の周囲の人がわからなくなるので、家族のことをわからなかったり、自分の配偶者を親だと思ったりすることがあります。記憶障害のみで、見当識障害がなければ、認知症の前段階の軽度認知障害ではないかと推測できます。時間に関する見当識障害が認められるようになったら軽度の認知症、場所に関する見当識障害が認められるようになったら中等度の認知症、人に関する見当識障害が認められるようになったら高度の認知症の可能性があります。

こうして認知機能障害の程度を判断したら、つぎにその原因を判定します。認知機能障害は医学的な原因で起こるので、もの忘れ外来などの医療機関で調べることになります。認知機能障害の原因は様々です。身体的な原因、サプリメントを含む内服中の薬剤の副作用、そして脳神経細胞の減少に伴う脳の機能低下、さらに不安やうつ状態などの精神症状なども原因となります。もの忘れ外来では、身体的な原因を検索するために採血検査を行います。さらにサプリメントを含む内服中の薬剤の影響を調べます。脳の形態を調べるために頭部CTや頭部MRIを施行します。そして、面接の中で不安や抑うつ状態などの精神状態を診察していきます。このうち重要なのは、改善できる原因です。サプリメントや内服薬の副作用、採血検査で明らかになった身体的な原因、不安や抑うつ状態などの精神症状は改善できる可能性があるので、まず第一に介入すべきポイントになります。次回はまず介入すべきポイントについてお話ししましょう。

■上野先生から認知症について学ぶ学習会を開催します。
ぜひご参加ください。
5月から募集します。
詳しくは、広報ちょうなん5月号をご覧ください。

問い合わせ(申込先):福祉課 包括支援センター
【電話】46-2116