- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都墨田区
- 広報紙名 : 墨田区のお知らせ「すみだ」 2025年10月11日号
●株式会社 伊藤バインダリー(本所二丁目16番9号)
営業時間:月曜日から金曜日までの午前10時から午後5時まで
*正午から午後0時50分までを除く
*祝休日を除く
*詳細は同社HPを参照
お話を聞いたのは
代表取締役 伊藤 雅樹さん
◆すみだのものづくりに込められた思い
私たちは区内の製本会社を取材し、ものづくりの技術や製品に込められた思いに触れました。
◇世界中で愛される紙製品
株式会社 伊藤バインダリーは、長年培った製本技術を基に、シンプルで美しい紙製品を作り続けている製本会社です。広告物などの製本加工から始まり、現在はすみだモダンのブランド認証を受けている「メモブロック」などのオリジナル製品も展開しています。その洗練されたデザインと確かな品質は、国内外で高く評価されています。
本所にある工場には直営店が併設されており、見学やワークショップを通して地域の人々に親しまれ、多くの外国人観光客も訪れています。ワークショップでは実際に紙製品を作る工程を体験でき、ものづくりの奥深さに触れられるのも大きな魅力の1つです。
◇人とつながる道具を作る
伊藤社長がオリジナル商品を作り始めた理由は、「お客様の顔を見て直接商品を手渡しすることで、コミュニケーションを取りたかったから」だそうです。製本加工では、依頼されたカタログなどの完成品は、誰が手に取っているのか、なかなか分かりません。そのため、自社独自の商品を作りたいと考えるようになったそうです。
◇こだわりを大調査!
伊藤社長に、ものづくりをする上でのこだわりを教えてもらいました。
メモブロックには、滑らかな書き心地の紙やしっかりと厚みがある台紙など、厳選した素材が使われています。また、のり付けは機械ではなく、手作業で行っているそうです。商品の形や大きさ、パッケージ、カタログまで、一つ一つ世界観が伝わるように工夫して作られています。デザインを決めるときも、自分たちの会社がどう在りたいか、どういう人に使ってほしいかを考えているそうです。
製品へのこだわりのほか、社内の整理整頓や元気な挨拶、丁寧に機械を取り扱うことを心掛けています。
◇心と思いを込めた製品
伊藤社長が大切にしていることは、「正直であること」「諦めないこと」、そして「道具を大切にすること」です。どれも特別なことではありませんが、長い年月を掛けて同じ思いを持ち続けてきたことが、会社の力になっています。
最近はパソコンやスマートフォンなどの電子機器が広まり、紙を使う場面は少なくなってきました。それでも伊藤社長や社員の方は、届けたい人のために心を込めて一つ一つの製品を作っています。どんなに小さな物でも手を抜かずに作ることで、シンプルでありながら存在感のある紙製品が生まれるのです。
また、「道具を大切にする」という言葉には、ただ機械を長持ちさせるという意味だけでなく、仕事そのものを大切にし、紙の良さを引き出そうとする気持ちが込められています。その姿勢が、製品の細やかな美しさにつながっています。
伊藤社長は、地元の方とのつながりも大切にしてきました。地域に支えられてきたからこそ、自分たちのものづくりを通して恩返しをしたいと考えているそうです。「すみだから世界へ」。伊藤バインダリーは、これからも紙の魅力を多くの人に伝えていきます。
◆こだわりを体験!オリジナルメモノート作り
取材の中で、メモブロックとほぼ同じ工程で作るメモノート作りを体験しました。
◇メモノート作りを体験!
まず、メモの主役である紙を選びました。柄や色、紙質の違うたくさんの種類の紙があって、どれにするかとても迷いました。次に、選んだ紙の色合いや使いやすさなどを考えながら、紙の並び順や、メモを開く向きを決めます。
こうして土台が完成した後は、いよいよのり付け作業です。紙が少しでもずれるとうまくのりが付かないので、時間を掛けて丁寧に紙をそろえました。これはとても大切な作業です。そして、メモブロックの1辺に刷毛(はけ)を使ってのりを塗っていきます。刷毛を傾けてのり付けすることがポイントだと教わりました。
そして、のりが乾いた後、のり付けした場所以外の3辺を、長さ1メートル15センチメートルの刃が付いている断裁機で切り整えます。これを「三方断裁」というそうです。断裁機は、製本用やメモブロック用など、それぞれに専用の物があるそうです。
最後に、ハンマーを使い、表紙の厚紙に自分の名前や日付などを刻印して、メモノートが完成しました。
◇体験を終えて
メモノート作りで特に難しかった工程は、伊藤バインダリーの製品のこだわりの1つである、手作業で行うのり付けです。紙がそろっていないとのりがうまく付かないため、慎重に紙を整えて、満遍なくのりを塗るのはとても集中力が必要な作業でした。
自分で紙を選び、のり付けや刻印をして完成した世界に1つだけのメモノートを見たときは、とても達成感がありました。ものづくりの工程を間近で見学し、紙を扱う職人の技を体験できた貴重な時間でした。
