スポーツ 【新春対談】目標に向かって体を動かすことで、人も街も元気に。(1)

―アーティスティックスイミング界のレジェンドと語る、2025年、渋谷区のスポーツ・ムーブメント。―

■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
2025年新春。渋谷区出身のアーティスティックスイミングのメダリストで、JOC常務理事を務める小谷実可子さんを迎えて、スポーツの力とクリーン活動について語り合いました。

アーティスティックスイミングメダリスト・JOC常務理事 小谷実可子(こたにみかこ)さん
「オリンピアンの発信力をさまざまな地域活動に生かしていきたいです。マスターズでは4つの金メダルを目指して頑張ります!」
昭和41(1966)年生まれ、渋谷区出身。幼少期から才能を発揮し、高校時代はアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング)留学で単身アメリカに渡る。オリンピックでは、日本代表としてソウル1988大会で初の女性旗手を務め、ソロとデュエットでそれぞれ銅メダルを獲得。「日本シンクロの女王」に君臨した後、プール外に活動の幅を広げるために休養し、その間に長野1998大会の招致に携わる。バルセロナ1992大会の日本代表となり、大会後に現役を引退。国連総会に民間人として初めて出席した経験を持ち、オリンピック・教育関連の要職を数々務める。世界水泳選手権のリポーターや東京2020大会の招致アンバサダーなど国際的に活動する一方、自身がコーチを務めるクラブではアーティスティックスイミングの魅力を伝承している。

渋谷区長 長谷部健(はせべけん)
「区の施設を活用しながら、子どもたちや地域の皆さんがスポーツに親しめる機会を増やしていきたいと思います。」

長谷部:あけましておめでとうございます。
小谷:あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
長谷部:2024年は小谷さんにとって、どのような1年でしたか?
小谷:パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、パリ2024大会)ではオリンピック・ムーブメント※1を感じました。また、私自身は世界マスターズ水泳選手権(以下、マスターズ)2024ドーハ大会で初のミックスデュエット※2に挑戦し、金メダルを獲得できました。スポーツの楽しさや素晴らしさ、応援の力を改めて感じた、とても幸せな1年でしたね。
長谷部:金メダル獲得、おめでとうございます。災害から始まった大変な年ではありましたが、スポーツの力を感じることができた1年でしたね。パリ2024大会では、区が応援しているフェンシングや車いすラグビー、パラバドミントン、ボッチャがメダルを獲得しました。区民の皆さんから応援やお祝いの言葉をたくさんいただき、東京2020大会のレガシーを感じられて、とてもうれしかったです。

※1 フェアプレーの精神と友情・連帯を大切にしながら平和な社会を築き、人類の調和の取れた進歩を導くこと(JOC公式HPより引用)。
※2 男女ペアで演技をするアーティスティックスイミングの競技種目の一つ。

◇小谷さんは神宮前小学校在学時にアーティスティックスイミング(旧シンクロナイズドスイミング、以下AS)を始められて、ソウル1988大会では銅メダルを獲得するなど、第一線で活躍されてきました。
長谷部:私たち世代は、シンクロといえば小谷さんです。神宮前小学校の先輩でもありますし、プールでも友達とよくシンクロのまねをしていました(笑)。見た目以上に過酷な競技だと思いますが、どのようなところに魅力を感じていますか?
小谷:水、チームメート、観客の“一体感”があるところに魅力を感じています。演技中は息を止めているため苦しいですが、技が決まってパッと顔を出した瞬間に拍手喝采を浴びると、苦しさが吹き飛びますね。
長谷部:ソウル1988大会で銅メダルを獲得された時は、どのようなお気持ちでしたか?
小谷:うれしかったですが、想定通りではありました。世界の誰にも負けないくらい練習していたので、「絶対にメダルが獲とれる!」という確信があったんです。同じように限界まで練習した、引退直前のバルセロナ1992大会では補欠で泳ぐことはできなかったのですが、改めて振り返ってみると、100%の自信がなかったことに気付きました。オリンピックには喜びも厳しさも含めて、いろいろなことを教えてもらいました。
長谷部:東京2020大会ではスポーツディレクター※3を務められました。コロナ禍を乗り越えての開催という大変な経験をされましたね。
小谷:とても苦しい日々でしたが、選手たちが一生を懸けてきた夢の舞台をつくることが自分の使命だと信じ、徹夜の交渉を重ねました。大会中もさまざまな困難がありましたが、アスリートの頑張りは人々を笑顔にするんだと感じられる場面がたくさんありましたね。今でも海外に行くたびに「日本ありがとう!」「応援していたよ。素晴らしかった!」と言っていただけるんです。そうした東京2020大会への感謝と評価を、これからもっと伝えていきたいですし、皆さんの誇りにしていただきたいと思っています

※3 国際競技連盟と連携し、競技の安全、円滑な運営を指揮するリーダー。