くらし 音のない世界を知って誰もが暮らしやすいまちに

聴覚障害は外見からは分かりにくいため、周囲に気付かれないまま困難を感じることがあります。でも、ちょっとした気付きや行動が、うれしい助けになることも。手話言語通訳者の方と聴覚障害のある方に話を聞きました。

■「聞こえない」はさまざま
ろう者:主に幼少期から聞こえず、手話を使う方
難聴者:音が聞こえにくい方。軽度から重度まで程度はさまざま
中途失聴者:音声言語を獲得した後に聞こえなくなった方
加齢性難聴者:年を重ねて難聴になった方

■手話通訳者の方の声~お互いを理解し伝え合えるように
野本美香(のもとみか)さん
中野区登録手話通訳者。高校2年生のころに手話に興味を持つ

◇きっかけは、少しの興味から
障害のある方の社会参加と平等を世界に呼び掛けた国際障害者年(1981年)に放送されていた聴覚障害者をテーマにしたドラマを見て手話に興味を持ち始めました。
大学入学後は、地域の手話サークルで活動をするように。聞こえない方と関わる機会が自然と増える中で、今の手話通訳者の道に進んでいきました。

◇会話の主役は、聞こえない方
手話通訳の現場では、聞こえる方がつい通訳者の方に話しかけたり、「本人に伝えておいてください」と通訳者に伝言を頼んだりしてしまうことがあります。
でも、会話の主役はあくまでも聞こえない方。私たち通訳者は、その方の“耳”と“口”の代わりになる黒子のような存在で、聞こえない方が自分の力を発揮できるよう支えています。だから、話す時は聞こえない方本人に向かって伝えてほしいと思います。

◇コミュニケーションを諦めないで
手話ができなくても、コミュニケーションをためらう必要はありません。顔を見て目を合わせた上で、ジェスチャーや身振り手振り、口元を見えるようにするなど、ちょっとした工夫で伝わりやすくなります。他にも、筆談や図を示して伝える方法も。その際は、難しい言い回しをせずに簡潔に書くことがポイントです。
また、聞こえない方に話しかけても気付かないときは、軽く肩を叩いたり、手を振って合図をしたりして、会話を始めてほしいと思います。

◇手話が自然に使われる社会に
手話は特別なものではなく、日本語などの音声言語と同じ言語です。中野区でも「中野区手話言語条例」が施行されていますが、手話に触れる機会がもっと増えて、自然に使われるようになったらいいですね。

■ろう者の方の声~手話は言語 共に歩む社会へ
板橋弥央(いたばしみつお)さん
中野区聴覚障害者福祉協会理事。中野区手話講習会の講師としても活躍

◇手話は私の母語
2歳のころ、周りの音に気付かないことを不思議に思われ検査を受けたところ、耳が聞こえないことが分かりました。両親も耳が聞こえないので、生まれた時から手話で会話をしています。だから、私にとって手話は日本語などと同じ言語であり母語。聞こえないからと言って、「どうやって伝えればいいんだろう」と難しく考えず、ただ言葉が違うだけと身構えずにいてほしいと思います。

◇壁はある。でも、少しだけ崩れてきた
昔は、聞こえないだけで免許が取れなかったり、会議の参加へのハードルが高かったりと、いろんな制限がありました。レジャー施設に出掛けた時、「聞こえる人がいないと入れません」と断られたことも。とても悔しく、理解が足りていないと感じた瞬間でした。
今は法律も整えられ、少しずつ理解も深まってきたと感じます。聞こえないと分かると、すぐに筆談やスマホの自動音声翻訳などを使ってくれる人も多いです。
それでも、壁を感じることがあります。例えば、電車の事故などの緊急時は、何が起きているのか分からず不安になります。イベントなどでも手話がない場面もまだ多くて。「聞こえない人もいるかもしれない」と心の片隅においてくれたらうれしいです。

◇デフリンピックがやさしいまちへのきっかけに
デフリンピックが、聞こえない人がいることや、手話を知ってもらえるきっかけになってほしいです。「聞こえる」「聞こえない」関係なく、誰もが壁を感じずに暮らせるやさしいまちに向けて、みんなで壁を少しずつ崩していけたらいいですね。

■聞こえづらさを感じている方へ
◇補聴器購入費用の一部助成を受けられます
次の対象の方は、購入費用の一部助成を受けられます。購入前に申請が必要です。申請要件や助成額などについて詳しくは、区HPをご覧になるか、各係へ問い合わせを。

対象・問合先:
・18歳未満で身体障害者手帳の交付対象とならないお子さん…子ども医療助成係/3階【電話】3228-5623【FAX】3228-5679
・65歳以上で加齢により聞こえづらさを感じている方…在宅サービス係/3階【電話】3228-5632【FAX】3228-5620

◇ヘルプマークを配布しています
配慮や支援が必要であることを周囲に伝える方法です。
配布場所:地域事務所、すこやか福祉センター、区民活動センター、区役所3階障害福祉相談窓口など

問合せ:障害者施策推進係/3階
【電話】3228-8832【FAX】3228-5662

◇他にもさまざまな支援・サービスがあります
「障害福祉のしおり」に詳しく掲載しています。区HP、地域事務所、すこやか福祉センター、区民活動センター、区役所3階障害福祉相談窓口で配布中。

■アスリートに「目で見る応援」を
◇新しい応援のかたち サインエールでデフリンピックを応援しよう!
サインエールは、「きこえる・きこえない」に関わらず、全ての人がアスリートに思いを届ける応援スタイルです。日本の手話言語等をベースにつくられています。詳しくは、都HPでご覧になれます。

(1)行け!
両手を顔の横でひらひらさせ、勢いよく前に突き出す

(2)大丈夫、勝つ!
右手を開いた状態で胸にあてる。横にスライドさせた後、拳を握る。左手も同様に繰り返した後、ガッツポーズをするように両拳を前に強く出す

(3)日本 メダルを掴み取れ!
両手でひし形を作る。左手は地面と水平にし、右手は親指と人差し指で丸を作る。そのまま右手を左手の下にくぐらせ、上にあげた位置で掴み取るような動作をする