スポーツ 【特集】「すぎなみビト」東京2025デフリンピック(2)

■デフ卓球

東京2025デフリンピック日本代表
デフ卓球選手
亀澤理穂

プロフィール:亀澤理穂(かめざわ・りほ)
平成2年杉並区生まれ。日本聾話(ろうわ)学校卒業。卓球経験者の両親の影響で小学1年生のときから卓球を始める。全国ろうあ者卓球選手権大会、世界選手権大会ほか、デフ卓球の主要大会で成績を残す。デフリンピックは初出場の台北2009大会以降、4大会に出場し8個のメダルを獲得。令和4年度杉並区スポーツ特別栄誉章受章。東京2025デフリンピックでは初の金メダル獲得を目指す。

─卓球を始めたきっかけを教えてください。
生後10カ月で先天性の難聴だと分かり、障害の程度はどちらかというと重い方ですが、そんな中でも小さい頃から体を動かすのが好きで、いろんなスポーツをやってきました。その一つが卓球です。デフリンピックを目指したきっかけは、中学1年生のときに参加したデフ卓球の合宿で、デフリンピック金メダリストの方の講演を聞いたこと。自分も出てみたいと憧れて、卓球に取り組む姿勢が変わりました。そして中学3年生で出場したデフ卓球の全国大会で、3位になったことが自信になり、「私もデフリンピックに出る!」と明確に日本代表を目指すようになりました。

─その後、有言実行でデフリンピックに出場し、初めての大会で銀・銅2つのメダルを獲得されましたね。
目標としてきたデフリンピックの表彰台で日の丸が上がったときは本当に鳥肌が立ちました。以降、デフリンピックには4大会連続出場しましたが、金メダルには手が届いていません。今回は、その「忘れ物」を取りに行く大会だと強く思っています。また、娘が生まれてからは「娘に金メダルをかけてあげたい!」という思いも原動力の一つです。これまでのどの大会よりも他の選手のレベルが高く、ハードな戦いになるといわれていますが、精一杯戦います。

─デフ卓球はどのような競技ですか?
基本的なルールは卓球と同じで、音のない状態でプレーするという違いだけです。卓球はボールがテーブルで弾む音・回転する音など、さまざまな音を頼りにプレーする面も大きい競技。デフ卓球の場合はそれができないので、ボールをしっかりと見て、体のリズムを使ってプレーしなければなりません。また、音でボールの行き先を判断できないため、打ったボールがどこに飛んだかを見届ける必要があり、そんな意味では、集中力の持ち方が違ってくるのかなと思います。他にも選手同士のコミュニケーションもデフならでは。手話で作戦を話し合うと他国の相手チームで日本の手話が分かる人がいるかもしれないので、テーブルの下で見えないように手話をします。口話を訓練している人も多いので、口の動きを読まれないようにラケットで口元を隠すのも欠かせません。

─デフ卓球の魅力や注目ポイントをぜひ教えてください。
観戦の際には、音のない世界での集中力のすごさを感じてほしいです。特に目の動きに注目すると、どれだけ集中しているのかきっと伝わると思います。また、選手、監督・コーチ、手話通訳者の間で交わされるコミュニケーションの方法にもぜひご注目ください。団体戦では、手話・拍手・手を使ったアクションなどチームメートを応援する方法もさまざまあるので、見ていて興味深いと思います。

─東京でデフリンピックが開催されることにはどんな思いがありますか?
身近な場所でデフスポーツの世界大会が開催されるチャンスはなかなかないので、神様からの贈り物だと思って、非常に楽しみにしています。今大会を通してデフリンピックの知名度が上がり、デフスポーツへの支援につながっていくことに期待しています。そして、聴覚障害者への理解が深まり、社会が良いかたちに変化していくきっかけになればうれしいです。また、情報保障(※)も今はかなり充実してきましたが、さらに整えられてさまざまな方法が備わっていくことにも期待しています。実際に会場に来ていただくことで気づきや発見もきっと得られるはず。会場での応援をお待ちしています!
※障害者への情報提供の方法。聴覚障害の場合、手話通訳者の配置などがある。

■みんなで応援しよう! 東京2025デフリンピック
無料で観戦できる!

日本で初開催となる「東京2025デフリンピック」は、第1回パリ大会から100周年の記念となる大会です。70~80カ国・地域から、21競技に約3000人もの選手が参加します。音のない世界で輝く選手を応援して、一緒に大会を盛り上げましょう! 詳細は、区HPをご覧ください。

開催期間:11月15日(土)~26日(水)
場所:東京体育館、大森ふるさとの浜辺公園 ほか

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