くらし [特集]地域の相談役 民生委員児童委員(3)

◆委員同士が一番の理解者
各地区の定例会では、民生委員児童委員が活動の中での悩みや困り事などを相談する時間を大切にしています。4月9日、小原さんが地区会長を務める、花水地区の定例会(写真)では、委員同士が悩みや思いを話す時間をたっぷりと作っていました。「じゃあ、次は相談タイムだね」。小原さんが言うと、おのおのが話し始めます。
そして相談タイム終盤、「感じ方も考えも皆さん違うので、対応が大変ですよね。私は、落ち着いて相手の話を否定せずに聞くことの大切さを活動で実感しています。焦りなどは相手にも伝わってしまうんです」と1人が話します。「慣れていないケースは、他の民生委員児童委員に声を掛けて一緒に対応してください。1人でしょい込まないでくださいね」と寄り添う声掛けに、みんながうなずいていました。

Q:皆さん民生委員児童委員として、どこまで対応していますか。先日、初めて夜遅くに電話がありました。認知症の80歳代の方で、ガス栓が閉まらないって焦って連絡してきたんです。結局、ガス栓ではなく給湯器の電源が消えないという話で大ごとではなかったのですが、最初の情報だけだと二次災害の恐れもあり、どう対応すべきか困ってしまいました。
A:みんな正義感があるから、相談されると何とかしようって思っちゃうんだよね。心配ですぐに見に行きたい気持ちも分かるけれど、餅は餅屋に任せましょう。SOSに気付いたら、「対応できるところにつなぐ」でいいんです。自分の身の安全を確保できるのかを、第一に考えてくださいね。

Q:近くに頼れる親族がいない、1人暮らしの方からの遅い時間の連絡は、皆さんどう対応していますか。
A:夜10時くらいに「保険証がない」と電話がくることがあります。認知症の80歳代の方です。緊急を要しない相談は、いったん話を聞いて、翌日伺う約束をしています。
また、近くに住んでいないから夜遅くに何かあったら心配と言って、親族が相談に来るケースもあります。本人の希望次第ですが、施設入居を提案することもありますね。

◆また生きがいを見付けられた
伊藤富士夫さんは民生委員児童委員になって2期6年目になります。警察官の仕事を定年退職してから、地域のために委員として活動しています。「民生委員児童委員としてどこまで対応すべきか、戸惑う事もあるけれど、頼りにしてもらえたり、関わった方が生き生きしてる姿を見られたりすると、やりがいを感じますね」と話します。

◇不安に寄り添い続ける
伊藤さんが定期的に訪問している1人に中西良子さんがいます。中西さんは4年前に、娘の住んでいる平塚市に転入してきました。「新しい環境で友だちもいないし、脚が悪いから自分1人では行けるところが限られるので不安でいっぱいでした」と来たばかりのころを振り返ります。「伊藤さんには2年前からお世話になっています。老人クラブや地域の団体とつないでもらえて、ここでの暮らしが楽しくなりました」とほほ笑みます。中西さんは前に住んでいた場所で、地域活動に積極的に参加していたそう。「もう外に出てこんなに活動できないと思っていました。趣味程度ですが、撮った写真をパソコンで編集してアルバムを作ります。みんなに喜んでもらえるのが今の生きがいです」。

◇誰にも言えなかった悩み
前向きな中西さんですが、体調面の不安をずっと誰にも相談できないことがありました。ただ伊藤さんには話せたそうです。「今思えばなんてことない症状だったけれど、相談できたことで気持ちが本当に楽になりました。おかげで病院にも行く気になったんですよ」とにっこり。「この地域に来て良かったわ」と楽しそうに話す中西さんと、伊藤さんは和やかに会話を続けていました。