くらし 暮らしに寄り添う地域医療の今とこれから(1)

地域の医療を上手に利用しながら暮らしている人がいます。今月は、地域にどのような医療があるのか紹介します。

■自宅でひとり暮らしを続けたい 本人の願いを支える医療サポート
原田 涼さん
お茶の教室を開くなど忙しい日々を過ごしていた原田さん。その体に異変が起こったのは、3年ほど前。突然視界が真っ白になり動けなくなる症状が現れ始めました。その回数が徐々に増えていくことに不安を覚え、地域の診療所を受診。主治医から紹介された病院で、心不全と診断されました。入院治療により症状は落ち着いたものの、退院後も継続して医師の診察を受ける必要がありました。しかし原田さんは膝の痛みなどがあるため、自力での通院は困難。それでも「自宅で過ごしたい」と自由で自立した生活を望み、現在もひとり暮らしを続けています。
そんな原田さんの生活を支えるのが、定期的に自宅を訪れる地域の医療従事者です。週に数回、曜日を変えて訪問し診療やリハビリを行うことで、体調の変化を素早く発見できる体制を整えています。「皆さんが来たときには、短い時間でもおしゃべりをしています。たわいない話がほとんどですが、とても気分が晴れます」。
約50年前に逗子へ移り住み、家の客間で茶道の教室を開いていた原田さん。「ここで家族やお茶の仲間と何十年も楽しんできたから、この家で最期を迎えたい。病院に行けなくても、こうして定期的に診てもらえるので安心して過ごせています。医療従事者の方々の丁寧な対応に感謝ばかりです」と話します。多岐にわたる医療体制が原田さんの日々の暮らしを支えています。

■原田さんを支える医療体制
医師や薬剤師など、さまざまな医療の専門家がチームとなって原田さんの生活を支えています。

●訪問診療
通院が困難な人の自宅に医師が定期的に訪問し、診察や検査、治療などを行います。原田さんのもとには月に2回訪問。看護師や薬剤師、理学療法士に指示を出し、原田さんの希望を尊重した医療をチームで提供しています。

●訪問リハビリ
身体機能の維持を目的に、理学療法士が自宅を訪れて行う訪問リハビリ。原田さんは週1回取り組んでいます。生活の場である自宅での立ち座りや歩行といったリハビリテーションが、安全なひとり暮らしの継続を支えています。また、関節可動域訓練も行い、関節が固まるのを防止すると同時に全身の状態を確認しています。

▽リハビリしながら心身の状態を確認
理学療法士 喜納真広さん
毎回、体調や日常生活での変化がないか、通常プログラムが行えるかを確認してからリハビリを始めています。例えば「腰が痛い」と言われたら、なぜそうなったかを聞き、生活での注意点などを伝えます。主治医や看護師にも情報共有し、チーム全体で原田さんの抱える課題を解決できるよう取り組んでいます。

●薬の訪問指導
医師からの指示を受けて薬剤師が訪問し、服薬の管理や指導を行います。訪問する対象者は末期がん、パーキンソン病などの病気の人や認知症の人、通院が困難になった人など多岐にわたります。

▽訪問で服薬状況をしっかりサポート
薬剤師 辻上伸子さん
飲み忘れが多い方には薬のセット方法を工夫します。末期がんの方には鎮痛剤、特に医療用麻薬の用意が必要です。口から飲むことが難しくなる場合も考え、貼り薬など外用剤タイプも準備しておきます。ご家族にも薬の使い方と副作用時に対応する薬の説明を行います。また、全ての方々に処方された薬の効能効果や副作用などを分かりやすく説明します。
原田さんは服薬状況がとても良く安心しています。長年住み慣れた自宅で暮らし続けたい。薬剤師はその希望をかなえるため必要な医療サポートを、服薬に関し任されています。医療の充実した安心して暮らせる逗子であることを願っています。

●訪問看護
看護師が定期的に訪問し、病状の観察や血圧などの確認、医療機器や点滴の管理を実施。家族からの療養に関する相談にも対応しています。原田さんが訪問看護を受けるのは週1回。病状から一人でお風呂に入ることが難しいため、入浴の介助も受けています。心臓に負担をかけない安全な入浴が、心身の健康維持に役立っています。

問い合わせ先:国保健康課