くらし 暮らしに寄り添う地域医療の今とこれから(2)

■私も地域医療に支えられています
地域医療が支えるのは、病気を抱える人だけではありません。介護する家族へのサポートや、健診・検診で健康状態の確認も行っています。

●CASE1
自宅にいながら手厚いサポート 本人も介護者も支える医療体制

▽Sさん(久木)
重度の認知症のため寝たきりで過ごすSさん。施設入所を勧められましたが、自宅での生活を続けています。
日常の介護は、ホームヘルパーなどによる支援を受けながらSさんの妻が行っています。さらに主治医、看護師、歯科医師、理学療法士などがSさんの自宅を訪問し、医療を提供。Sさんの妻は、できることは自分でやりたいと、痰が絡んでしまったときの吸引の方法などを看護師から教わり実践しています。「私だけではケアが至らないこともあります。細かいところまで診てくださる専門の方々の訪問に助けられています」。

▽医療従事者より
・看護師 武藤恵子さん
全身の状態を観察した後、清拭やお湯に手を浸けて洗う手浴などで、体の清潔を保っています。主治医から「本人の意思を尊重して」と指示を受けていて、触れられると体がこわばってしまうSさんには、声掛けしながらケアをしています。緊急時にいつでも対応できる体制も整えており、ご家族には「家のナースコールだと思って」と伝えています。

・歯科医師 松岡友輔さん
お口の中を清潔にすることは、不快感を減らし、虫歯や歯周病、誤えん性肺炎の予防につながります。Sさんへの定期的な訪問診療では、歯こうの除去などの口腔ケアを行っています。可能な限り本人のお口から食事がとれるよう、Sさんに合った食べ物の形態や、介護者の負担にならないような介護食の提案などもしています。

●CASE2
精密検査も市内で 身近な専門医に安心できた

▽Wさん(久木)
健康診断で肺がんの疑いがあると診断されたWさん。精密検査を受けるため、市内にある医療機関の診療科目を調べ、呼吸器科を掲げるクリニックを受診しました。「結果や指示をただ伝えられるだけではなく、医者と話をして納得したい。地域の専門医なら丁寧に応じてくれるだろうと考えました」。
呼吸器科のクリニックから、より精密な検査を受けられる市内の別の診療所を紹介されてCT検査を受診。その結果がクリニックの医師に報告され、異常なしと診断されました。「精密検査というと大きな病院に行くイメージがありましたが、地域でしっかり診てもらえて安心しました」。

■もしもに備える安心の医療体制
いつでも・どこでも正確に対応できるための医療情報共有システムや、災害時に備えた市の医療体制を紹介します。

●情報共有
医療や介護情報の地域連携システム「さくらネット」

さくらネットとは、登録した人の医療や介護、薬の情報を、地域の医療機関や介護施設などで相互共有するためのネットワークシステムです。逗子市を含む横須賀・三浦二次医療圏を中心に、横須賀共済病院や湘南鎌倉総合病院などの病院、地域の診療所、薬局など、さまざまな施設が参加しています。
さくらネットに登録することで、初めての診療や救急時などにも病歴やアレルギー、薬の処方、検査結果といった詳しい医療情報を正確に把握してもらえるため、適切な医療や介護を受けることができます。

●こんなときに便利・安心
災害時:治療履歴の共有による適切な治療の継続
救急時:アレルギーや検査結果を把握した対応が可能
薬:複数の薬の処方による副作用などの防止
介護:医療情報を考慮した介護サービスの提供
・連携する情報は、診療・手術歴、薬の処方歴、アレルギー、医療機関の受診歴、検査結果・画像など

●災害時
医療救護所の開設とのぼり旗の掲出

逗葉医師会、逗葉歯科医師会、逗葉薬剤師会などと連携し、災害時に備えた地域の医療対策を進めています。
大規模災害時、市では災害時医療救護所を開設します。救護所には、地域の医師や看護師などが集まり、病人やけが人の救護活動を行う予定です。緊急時にスムーズに活動できるよう、訓練や研修を行っています。
また、災害時に診療・開局している診療所や薬局では、黄色いのぼり旗を掲げます。目印として活用してください。