くらし 市長日記 むーけーげー(無罣礙)

南魚沼市長 林 茂男

■光
毎年、年末になると、流行語大賞や京都のお寺での今年の世相を一字で表す行事などが伝えられます。では南魚沼市の大きな出来事は何?さまざまにありますが、今年は「熊」と「渇水」だと思います。その深刻さはまさに脅威的でした。過去にこのコラムでテーマにしていますが、それを大きく超えるものでした。
6年前の熊の大出没。全国ニュースで取り上げられた市内診療所地下での冬眠騒ぎ。あの時の経験から熊対策への警鐘を鳴らし、市長会などさまざまな場で主張してきました。本来は趣味の会である猟友会のみなさんに治安維持に相当するような役割を担っていただいている現状、市街地で凶悪犯が徘徊、潜伏しているに等しい状況には警察権による対応と新たな体制作りが急務である、と。当時は「また南魚沼市長が熊の話か」と発言をやや軽視されていると感じることが多く、悔しかった。しかし、今年の空前の状態を見てどうか。もう冷笑(わら)う者はいないはず。そして指摘どおり、国や社会が変わろうとしています。里山整備などを、この一環としても進めなくてはならない機運が全国的に高まるでしょう。
渇水は9月号に書いたので繰り返しませんが、農林水産大臣(前小泉大臣)が当市を視察するほど過酷なものでした。平成30年、令和5年の渇水経験。それを超えた今夏、市はついに初の水道水(消火栓による)使用まで。大臣視察とほぼ同時に、これまで市の単独事業として奮闘してきた、消雪用地下水の対応を含めた活動に初めて国による支援方針が発表されたのです。一筋の光を見る思いがしました。残念ながら、渇水は頻発するかもしれないが、私たちが進めてきた雪の資源活用は農業用水として、また食料備蓄のための雪冷蔵化などの道が開かれる好機となるかもしれない。困難な状況にあるのは事実ですが、座して死を待てない。災い転じて福となす、か。将来への光明もあるのだと。京の高僧ではありませんが、仮に一文字で揮毫(きごう)せよと言われれば、あえて今年のそれは「光」と書きたい。