文化 続・ひみ 未来遺産「第36回氷見にまつわるヘビの話」

続・ひみ 未来遺産
第36回 氷見にまつわるヘビの話 〜巳年に氷見とヘビの関係を考える〜

今年、令和7年は巳年(へび年)です。その姿形から忌み嫌われることも多いヘビですが、生産や生命力の象徴、あるいは水神として、古くから信仰の対象でした。
国指定史跡の朝日貝塚では、縄文土器の口縁に取り付けられていた獣面把手(じゅうめんとって)が2点出土しています。いずれも鎌首をもたげたヘビを表現しているとみられ、氷見の縄文人の、ヘビに対する信仰心を表しているものと考えられます。
一方、ヘビは生命力の象徴であるとともに、人に害悪を与える存在でもありました。上日寺(朝日本町)には、「巳石(みいし)」と呼ばれる板碑(いたび)があります。この板碑には、朝日山一帯で害をなしていた悪蛇や毒蛇を、龍神がこの場所に封じ込めたという伝説が伝わります。
また、氷見市姿の沖合に浮かぶ虻が島は、元は「蛇が島」と呼ばれていたといい、ヘビに関する伝説が残されています。
昔々、石動山の蓮池や姿の蛇池に住む大蛇が、周辺を荒らし人々に危害を与えておりました。ある時、大蛇は人々によって退治されますが、その際に斬り飛ばされた頭が姿沖の島に落ち、後にこの島は「蛇が島」と呼ばれるようになったといいます。ところが、ヘビの祟りか島に近づく船がたびたび難破したため、島の名を虻が島と改めたところ、祟りは収まったのだそうです。
現在も虻が島には蛇池と呼ばれる小さな入り江があります。蛇池は、石動山の蓮池とつながっており、大蛇の親子が行き来していたともいいます。これら虻が島に残るヘビの伝説は、水神としてのヘビに通じるものと考えられます。
(博物館主査 廣瀬 直樹)

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