文化 続・ひみ 未来遺産 第37回「縄文土器のイノシシ造形」

■縄文土器のイノシシ造形
〜イノシシと氷見の縄文人〜

近年、氷見の野山や田畑を荒らす害獣として扱われるイノシシですが、縄文時代にはシカとともに主要な狩猟対象であり、貴重な食料でした。また、骨や牙は骨角器の材料となり、毛皮も利用されたと考えられます。さらに、多産で生命力が強いイノシシは、豊穣のシンボルとなり、土器や土製品のモチーフとして盛んに用いられました。
氷見市内の遺跡では、岩上(いわね)遺跡(伊勢大町)からイノシシを表現したとみられる獣面土器が2点出土しています。
1点は縄文土器の深鉢口縁に取り付けられた突起部で、丸い目と鼻が表現されています。また背中にヘラで描かれた縞模様から、仔イノシシ、いわゆるウリ坊を模したものとわかります。
もう1点も縄文土器の深鉢で、口縁部に丸い目から鼻筋が長く伸びた獣面の文様が貼り付けられています。極端にデフォルメされていますが、これは成獣のイノシシを模したものと考えられます。
ウリ坊が約4千6百年前、成獣のイノシシがそれより数百年新しい年代のものですが、どちらも丸い目と鼻筋を玉抱(たまだ)き三叉文(さんさぶん)で表現しているのが特徴です。玉抱き三叉文は、三叉文と呼ばれる三又の文様が玉を抱き込んでいるようにみえることからその名があり、大境洞窟住居跡の石棒にもみられる縄文時代の特徴的な文様のひとつです。自分たちになじみ深い文様を駆使して、氷見の縄文人たちはイノシシを表現したのでしょう。
これら獣面土器は博物館の常設展示室で公開しており、現代とは違う、人とイノシシの関係性が伝わってきます。
(博物館主査 廣瀬直樹)

問合せ:博物館
【電話】74-8231