その他 鯖江でがんばる あの人の笑顔と素顔 vol.24

NPO法人かわだ夢グリーン狂言クラブ 若手メンバー
齋藤信富(ことぶき)さん(18)さん、大嶋愛里(あいり)さん(12)

(齋藤さん)鯖江高校3年。好物はオムライス。自分でもよく作る「卵にマヨネーズ入り」は母独自の隠し味。高校ではデザインを専攻しており、漫画家志望。
(大嶋さん)今年3月に河和田小学校を卒業。「私の体の8割はエビでできている」と話すほどエビ好き。6人組ユニット「すとぷり」ファン。将来の夢は客室乗務員。

問合先:【電話】090-2036-1935(NPO事務局)

《地元愛、狂言に込めて》
狂言を通じて地元の魅力発信に取り組む「NPO法人かわだ夢グリーン狂言クラブ」で若手メンバーとして活躍する。演目は、越前漆器の産地にちなんだ要素を随所にちりばめたオリジナルだ。2人は「クラブでの経験は舞や舞台など、日常で味わえないことばかり。新しいメンバーにもぜひ入ってほしい」と呼び掛けている。
狂言は庶民の生活を題材にした喜劇で、室町時代から続く。能と併せて「能楽」と呼ばれ、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。演目数は約270あり、中には越前漆器がモチーフとみられる演目もある。「塗師(ぬし)」平六(へいろく)。ストーリーはこうだ。
都で思うように仕事が見つからない漆器の師匠が、弟子の平六を頼って越前にやってきた。しかし、商売敵になっては困ると案じたのは平六の妻。「平六は死にました」と師匠に嘘を伝えるが、どうしても師匠に会いたい夫の平六。そこで、妻は平六を幽霊に仕立てて師匠に対面させるが…。
「塗師」平六の存在は、越前漆器が古くから世の中に知れ渡っていたことを示す証拠ではないか――。そう考えたNPOは2008年ごろから、狂言も含めたまちおこし活動を展開。有志メンバーでつくるクラブを立ち上げ、専門家からの指導を仰ぎながら稽古したり、イベントなどで演目を披露したりするほか、河和田小学校での活動を提案したりもしてきた。
こうした地道な取り組みを知った母親と一緒に、幼稚園の頃から参加しているのが齋藤さんだ。「狂言のセリフはイントネーションやテンポが普段の話し言葉と違って独特で楽しいんです」。一つ一つの動作が丁寧で、洗練されているのもかっこいい、と話す。
自身の持ち味は大きな声だ。力強く伸びやかな声は喜怒哀楽を豊かに表現し、物語を盛り上げる。リズムや節をつけてうたう「謡(うたい)」を担うことも多く、「謡はことちゃんしかいない」とメンバーたちに言わしめるほどである。
一方、大嶋さんが狂言と出合ったのは河和田小学校4年だった時。参加が必須のクラブ活動を選択するときに、「本当はプログラミングクラブに入りたかったけど、じゃんけんで負けて狂言クラブに入ることになった」と笑う。
それでも、「ほかの人がやらないことができる」と気持ちを切り替えて狂言に熱中。小学校のクラブに加えて地元NPOの狂言クラブにも関わるようになると、セリフを飲み込む持ち前の暗記力に舞台に立つワクワク感も手伝って活動を続けてきた。今年5月にあった越前漆器まつりでの舞台発表では齋藤さんと親子を演じ、親子間のコミカルなやりとりで会場を沸かせた。
受験生の齋藤さんは県外の大学進学志望だ。しかし、「越前漆器が都とつながりがあったことが分かるすごい伝統文化があるのに、それを途絶えさせたくない。河和田を盛り上げたい意識もあるので、何らかの形でクラブ活動は続けたい」と話す。大嶋さんは、「狂言に携われたのは河和田に住んでいるからこそ。メンバーや地元の皆さんに感謝したい」と笑顔を見せる。そのうえで、「狂言のおもしろさを私自身も広めていきたい」と語った。