子育て 【特集】妊娠・出産・子育てを支える地域医療(2)

◆QandA 産婦人科・小児科の先生たちに聞きました
◇産科部長・婦人科部長
堀田大輔(ほっただいすけ)先生
上田市出身。2008年から信州医療センター産科・産婦人科医として勤務(研修医期間を含む)。

不安を取り除くことが私たちの役割
「ありがとう」がやりがいです

Q.信州医療センター産婦人科の特徴はどんなところですか?
当院では、助産師が中心となって診察する助産師外来があります。妊婦さんの話をじっくり聞き、親身になって一緒に考えてくれています。
市の保健師とのつながりが強いのも特徴です。出産後はホルモンバランスの乱れや環境の変化から疲労を感じやすく、育児の不安もでてきます。中には「産後うつ」になる方もおり、そういった状況を防ぐためにも、医療機関と行政がともに妊産婦さんを支えています。病院の診察の場面や保健師との面談で、精神的な不調や育児不安などのさまざまな悩みを聞き取り、必要に応じて情報を共有しながら妊産婦さんに関わらせてもらっています。市からの委託を受け、育児相談や指導を行う産後ケア事業も行っています。家族の援助が受けられない方や体の休息を取りたい方などにぜひご利用いただきたいです。

Q.心掛けていることはなんですか?
妊産婦さんが困っていたことを覚えているようにしています。次の受診時にその悩みが解決しているのか、あるいは悩みが発展してしまっているのか、状況に応じて、その人に寄り添った診察を心掛けています。特に出産が初めての方は「この症状は大丈夫?」と体調の変化一つ一つが心配になります。「育てる」という想像もなかなかしにくいですよね。相談に乗ってくれる人が周りにいれば良いですが、最近は核家族が増えています。私たちは妊娠の経過を診ること、異常がないか確認することが主な診察内容です。その中で、できるだけ不安を解消してあげることが大切だと思っています。

Q.堀田先生は地域の皆さんにとってどんな存在でありたいですか?
「頼りになる存在」でありたいと思っています。「ありがとう」と言われることが私の一番のやりがいです。産婦人科は、生理関係、出産、更年期まで一連で診ていけるところも魅力だと感じています。当院で出産したお母さんが、成長した子どもの受診に付き添って一緒に来る場面もあります。長年勤めているからこそ経験できる嬉しい出来事です。市内でも少子化が進んでいますが、「子どもを産みたいと望んでいる人を導いていくこと」が産婦人科の一つの役割だと思っています。最近は外国人の方の受診も増えています。これからも全ての人が気軽に受診できるよう取り組んでいきます。

◇小児科部長
南勇樹(みなみいさき)先生
須坂市出身。2017年から信州医療センター小児科医として勤務。

産婦人科との連携から発達外来まで
地域全体で子育て世帯を支えたい

Q.信州医療センター小児科の特徴はどんなところですか?
当院では産婦人科と小児科が毎週一緒に会議を行い、情報を共有しています。お腹の赤ちゃんの状態を把握しておくことで出産時に異常事態が発生した場合にすぐに対応でき、必要に応じて適切な機関につなげます。速やかな対応ができるのは総合病院ならではの強みです。
また、乳幼児健診や予防接種、疾患外来に加え、発達心理外来を行っており、発達症、心身症、不安症なども診療しています。心のこと、不登校に関することなど、さまざまな悩みを抱えるお子さんがおり、小児科の枠を超え、学校の先生、市教育委員会、保健師とも連携しながら、一人一人の心のケアに取り組んでいます。お子さんの心身の状態は周りの環境が影響する場合もあるため、地域全体で子育て世帯を支えていくことが重要だと考えています。

Q.子育て世帯へのサポートとしてどんなことを行っていますか?
近年は少子化などの影響で全国的に小児科医が減ってしまっています。当院では、小児科不足による子育て世帯の不安を解消するため、10月から試行的に水曜日と金曜日の午後に一般外来を開始しました。インフルエンザやマイコプラズマの流行もあり、利用者は徐々に増えてきています。個人的な夢ではありますが、地域の小児科医や精神科医が増え、「子どもの調子が悪いときにすぐ診れる環境」を整えていきたいですね。

Q.南先生は地域の皆さんにとってどんな存在でありたいですか?
「必要不可欠な存在」になりたいです。体調が良くなることで、お子さん自身が笑顔になります。私はその笑顔を見ることが一番嬉しいです。これからも心のケアを含め、子どもたちを笑顔にできるような診療に努めていきたいです。

◆利用者INTERVIEW
「産後ケアで安心して育児の準備ができました」
堀尾さんご家族
信州医療センターで出産し、産後ケア事業の宿泊ケアを利用。子どもの初めての瞬間に立ち会えることに喜びの毎日を過ごしています。

◇ここで産みたい!と思いました
私は栃木県出身で、出産前後は実家の母が来てくれることになっていたので、須坂市での出産を決めました。夫の実家から一番近い信州医療センターを受診してみたところ、先生や助産師さんの雰囲気が良く、「ここで産みたい」と思いました。初めてかつ地元から離れての出産だったので、さまざまな不安もありました。家族はもちろんですが、先生と助産師さんがたくさん話しかけてくださり、丁寧にアドバイスしてくださったので、とても心強かったです。

◇周りに甘えることも大切です
私は産後ケア事業の宿泊ケアを利用しました。予定日よりも早い出産であったため、母の到着などが間に合わず、入院の延長を相談したところ、助産師さんに勧めていただいたことがきっかけです。産後ケアというと、退院後、困ったことがあったときに利用するイメージでしたが、入院から続けて利用できたので、ありがたかったです。夫が申請をしたのですが、手続きが簡単で驚きました。宿泊ケアでは、毎朝、先生が様子を見に来てくださり、助産師さんに指導してもらいながら、授乳や沐浴の練習を行いました。新生児は毎日の成長が早く、出産後は自分の心にも余裕がないため、さまざまな不安や疑問が出てきますが、その都度聞くことができ、子どもの症状を見ながら教えていただけるので安心感がありました。自分の体の回復もできました。
出産したては「がんばらなきゃ」と気負いがちですが、周りに頼り、甘えることも大事です。安心して育児をスタートできるよう、みなさんにも産後ケアをおすすめしたいです。