子育て 特集 中学生派遣事業(1)

■中学生被爆地派遣事業
毎年、8月6日に広島市で行われる原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式と、8月9日に長崎市で行われる原爆犠牲者慰霊平和祈念式典へ市内中学生を派遣しています。
式典への参列のほか、ワークショップへの参加による他地域の学生との意見交換や、被爆体験講話の聴講などを通じ、平和学習を深めることで、戦争の悲惨さを学ぶとともに、平和に対する啓発活動を行うことを目的としています。
戦後80年を迎えた今年。1989年から続く被爆地派遣も35回目となりました。本年度の「平和使節」の皆さんは、現地でどんなことを感じたのでしょうか。

◇ヒロシマ
8月5日・6日、南宮中学校3年生の山本美月(やまもとみづき)さん、松宮翠(まつみやすい)さん、飛岡紗衣良(とびおかさえら)さんの3人が広島市を訪れました。

飛岡:被爆した方のお話を聞いて、資料から想像していたよりも一瞬のできごとだったんだなって思った。
山本:怖いとかって言葉では言い表せない感情になったよね。写真からは見えない気持ちの部分を聞くことができたのは貴重な体験だった。
松宮:被爆したことを理由に差別された人がいたなんて考えたこともなかった。就職や結婚まで断られたなんて…。
飛岡:きっとあまり思い出したくもない経験だと思うけど、自分たちに起きたことを伝えることで、平和な世界を作っていきたいって気持ちを感じた。
山本:伝える役割をしているっていえば平和記念資料館も見学したけど、どうだった?
松宮:私は被爆した人の写真が忘れられない。放射線を浴びたせいで顔中に、歯ぐきにまで斑点ができてしまった人の。本当に怖かった。
飛岡:やけどをした人がござに寝かせられている写真も印象に残ってる。一人や二人じゃなくて、何十人も横たわっている様子に、これが現実なんだなって衝撃だった。
山本:原爆の悲惨さを思い知らされる展示が多かったね。私は、原爆によって亡くなった人の遺品の展示が印象的だった。家族とのエピソードとかが添えられてあって、その人の生きてきた時間を想像して胸が詰まるような気持ちになった。
松宮:一発の爆弾がたくさんの人の夢や希望、14万人以上の命まで奪って、しかもたった80年前に起きたことなんて信じられないよね。
山本:平和学習の集いでも、戦争の被害について改めて勉強して、「平和でない状態」と「その解決方法」について話し合ったよね。広島市の生徒の皆さんが平和とか今起きている問題とかに対してすごくポジティブな考えを持っていて見習いたいなって思った。
飛岡:被爆者の笠岡貞江さんが言っていた「世界が平和になるためには仲良くすることが必要」って、本当にそのとおりだと思う。
松宮:それなら今の私たちにもできるよね。友だちと意見が違ったとき、相手の話を聞いて理解し合う。平和な世界への第一歩になるよ。
山本:今回、広島に行ったことで、戦争や原子爆弾の怖さだけじゃなくて、平和への向き合い方についても学ぶことができた気がする。
飛岡:私たちみたいな中学生にできることは少ないけど、ここで知ったことを無駄にしないように、他の人にも伝えていきたいと思った。平和記念資料館や平和記念式典にいたたくさんの海外の方も、身近な人たちに広めてくれたらいいな。
松宮:私は今、とても幸せだって胸を張って言える。80年前は当たり前じゃなかった、安心して毎日を送れていることに感謝したい。

◇ナガサキ
8月8日・9日、高社中学校3年生の金井虹璃(かないななり)さん、齋藤翠(さいとうすい)さん、富井玲葉奈(とみいれよな)さんの3人が長崎市を訪れました。

齋藤:原爆資料館は事前学習で見た資料よりも生々しい展示が多くてちょっと怖かった。
富井:実物はインパクトが段違いだったね。私は被爆した方が着ていた白衣の展示が印象的だった。半分は血で染まってて、もう半分は熱線の影響で変色しちゃってて…。
金井:被爆した人の焼けただれた顔の写真もあって、原子爆弾の熱や爆風がどれだけすさまじかったかを思い知らされたね。
齋藤:でも、実物大の原子爆弾の模型は思ってたより小さかったよね。こんな大きさであんなに広い範囲に被害があるんだってびっくりした。
金井:8日にピースフォーラム平和学習で聞いた被爆者の三瀬清一郎さんの話もよく覚えてる。被害の状況を聞いて、自分の住んでいる場所に原爆が落ちてくることを想像したらすごく怖くなったけど、2日間で一番感じることが多かったから、レポートにしてみんなに伝えたいって思った。
富井:私もピースフォーラムのことは書きたいなって思った。全国の中学生や高校生と話し合うってなかなかできないし、「違い」ってテーマも日常的に考える内容じゃないからちょっと難しかった。
齋藤:国が違うと文化も違って、どうしてもわかり合えないところもあるって意見も出てたな。
富井:私たちのグループは、違いがあって考え方が異なっていたとしても、反発せずにお互いに何もしないことが認め合っている状態だってまとめになったよ。
金井:国や文化が違っても、お互いの国を理解し合って、守り合うことが今の世界には必要だと思う。
齋藤:平和記念式典の西岡洋さんの平和宣言も被爆した方だからこその重みがあったね。「絶対に核兵器を使ってはならない、使ったらすべてがおしまいです」って。
金井:でもこうやって被爆した方から直接話を聞けるって本当に貴重なことだよね。被爆者の平均年齢って86歳を超えたんだって。これから先、戦争や原子爆弾の恐ろしさを語り継いでいくのは、私たちの役目なんだって思った。
富井:この2日間の写真を友だちとか家族に見せたり、話題にするのも第一歩だよね。実際の体験を本人から直接聞いた私たちにしか話せないこともあると思う。
齋藤:長崎や広島に原爆が落とされたことは事実で、もうどうしようもない。でもここから世界中の人が学んで、考えることができれば、同じことが繰り返されることはないと思う。
金井:この2日間で、毎日登校して授業を受けて、友だちと楽しく過ごせること、大切な家族とおいしいご飯が食べられること、実は当たり前のことじゃなくて、本当に幸せなことなんだって思った。

問合せ:学校教育課
【電話】22-2111(内線418)