- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県中野市
- 広報紙名 : 広報なかの 2025年10月号
地域の未来を照らすみなさんを紹介します。
■やりたいと思ったら とにかくやってみる
陶芸家 飯沼禮子
いいぬま・れいこ 中野市三好町出身・在住。独自の手法「炭化珈琲焼」の作品を40年間作り続けている。2007年から19年まで全国公募陶芸財団展に毎年入選し、優秀賞・美術館賞を受賞。2020年以降、中野陣屋・県庁記念館で毎年趣向を凝らした作品展を開催している。
「陶芸との出会いはファッションデザインの専門学生時代。備前焼に惹かれて、展示会を巡る日々を過ごしました。」
卒業後はデザイン関係の仕事に就き、24歳で結婚。子育てが一段落した頃に公民館で開催された陶芸講座に参加し、飯沼さんの陶芸家としての道がスタートした。
「さまざまな窯元を見学したけど、弟子入りすることは考えていませんでした。誰かに習ったらその手法に縛られてしまう。自分のやり方で、自分だけの作品を作りたかった。」
そんな飯沼さんの作品は「炭化珈琲焼」という手法で仕上げられている。使用済みのコーヒーの粉を乾燥させて炭にし、焼き上げる際の燃料に使ったオリジナルの手法だ。大きな作品を焼く際は大量のコーヒーの粉が必要になるため、市内の喫茶店などから譲り受けていたそう。
「形を作るのに数カ月、焼き上げるのに数十時間。それだけかけても思うように仕上がらないこともあります。でも、想像どおりの作品ができたときの喜びを知ってしまったらもうやめられない。」
炭化珈琲焼を確立させて40年。陶芸一本かと思いきや、「半年前からピアノを習い始めた」と笑う飯沼さん。
「やりたいと思ったらとにかくやってみる。考えてしまうといろいろ理由を付けてやらないもの。合わないなって思ったらやめてしまえばいいのよ。」
文字アートや染め物、川柳、パッチワークなど、陶芸と並行して常にさまざまな作品に取り組んできた。今回、中野陣屋・県庁記念館で開催した展示会では専門学生時代に習ったぺーパーフラワーを陶芸作品とコラボさせた。
「孫とのエピソードを詠んだ川柳と陶芸作品をかけ合わせたことも。皆さんに新鮮な気持ちで見てもらえるように展示も工夫しないとね。」
今年78歳を迎えた飯沼さん。元気の秘訣は「好きなことを続けること。新しいことに挑戦すること。限られた時間を、ぼーっと過ごしたらもったいないもの。」