子育て 家庭教育アラカルト(27)

~子どもの世界を育てる~
祢津小学校 校長 田中 章子

皆さん、子どもの〝わくわく感〟をどう育てていますか?
誰でも小さな頃は、好奇心いっぱいでいろんな事に興味関心を持っています。
私の幼い頃には、祖母が満月を眺めながら、「うさぎのもちつき」や「かぐや姫」の話をしてくれました。大きく輝く満月がだんだんと欠けて細くなっていく。また、夜だけでなく昼にも姿を見せる月。子ども心に月は身近で、大変興味深い存在でした。高学年になり、『宇宙の秘密』という本に出会い、今まで目で見てきた事実が、本に書かれている知識とつながったとき、わくわく感が大きくなったことを今でも覚えています。
国語で比喩の授業を行った時のことです。寒くて真っ赤になった頬のことを「りんごのよう」と共有した後、「かもしかのような足とは?」と質問したところ、慣用的な比喩であるにもかかわらず、「毛深い足?」「短くて太い足?」と、驚きの解釈がいくつも出されました。子ども達が知っているのは「ニホンカモシカ」、太くて毛むくじゃらの足です。一方、「かもしかのような足」は「細くて長くて美しい足」の比喩です。ここでいう「かもしか」は、ガゼルなど、外国の「かもしか」のことだと伝えたところ、「なるほど、納得!」と大喜びをし、他の比喩についても学びを広げる姿がありました。
脳科学では、言語の発達は8~10歳頃でピークを迎えると言われています。小学校低学年までは、たどたどしかった言葉も、10歳前後で急にスムーズになり、大人と同じようなしゃべり方をするようになります。また、目上の人に向かって敬語を使うなど、人によって言葉や口調を使い分ける能力が身につくのもこの時期です。
しかし、言葉を知っているだけでは、学びの喜びは得られません。「知識」が「実際の体験」と結びついたときに、わくわくが大きくなり、知ることに純粋な喜びや楽しさを感じます。そんな体験を通して、子どもの中の『世界』が大きく広がっていきます。子どもの言葉は、その世界から育っていくのです。
「知識」の種をたくさん蒔き、「実際の体験」で子どもの世界を大きくきらきらしたものに育てましょう。