子育て 教育長コラム

■願いを共にして追及する楽しさ、素晴らしさ~竹とんぼの世界から~
羽島郡二町教育委員会 教育長 野原弘康

今回は、竹とんぼとそれに打ち込む人々との出会いから感じたことを綴ります。
竹とんぼは、子どもの頃に作って遊んだものですが、当時は1階の屋根の高さや、距離にして5mも飛べば、よく飛ぶと自慢していた記憶があります。その竹とんぼが進化を遂げ、現在はスーパー竹とんぼなるものが登場し、高度40m、滞空時間20秒、距離50mほど飛ぶとの情報に一瞬耳を疑いました。非常に興味深かったので、早速インターネットで調べたところ、飛ばし方や製作方法などの映像や資料は見つかりました。しかし、実際に本物に触れないと分からないと思い、三重県で開催された「2024全国竹とんぼ大会」に出向きました。
会場に到着すると、10代から90代の総勢50人ほどの選手が競技前の練習を行っていましたが、10から12cmほどの羽根をもつ竹とんぼが勢いよく舞い上がり、長時間にわたり飛んでいる様子を目の当たりにして、「これがスーパー竹とんぼか…」と言葉を失うほどの感動を覚えました。
競技は、滞空時間、高度、飛距離の三種目があり、種目に応じて竹とんぼの羽根の形状や大きさ、揚力を生むための角度等が異なっていました。競技が始まり、選手一人一人が願いを込め、「そりゃー」と気迫のこもった声とともに竹とんぼに回転を与えます。スッと舞い上がる竹とんぼは、空中で点にしか見えないほど高いところまで飛んでいきます。観衆はその行方を見上げ、歓声を上げながら笑みを浮かべていました。一つの競技種目を終え休憩時間になると、選手が集まり、形状、構造、素材、重量、飛ばし方など互いに改良したところを交流していました。特に金属や他の素材を埋め込み、飛びの性能を向上させた象嵌(ぞうがん)の竹とんぼには、多くの工夫を見ることができました。私も国際竹とんぼ協会会長の高橋様にお話を伺いました。例えば軸については、丸棒ではなく面取りをした3mmほどの角柱にすることで滑りを防ぐことや、滞空時間を長くするために回転力が持続するよう外側に向けて羽根を大きくし重量を増すこと、飛ばし方では、左右の中指の先まで一杯の距離を使って回転を与えるなど、数々の知恵やコツをお話しいただきました。
全国から集う有志たちが、夢を持ち感動を求めて共に過ごすとても素敵な時間と場に、「Well-Beingに満ちた社会」の縮図を見たような気がしました。
現代は、変化が激しく先行き不透明な時代を迎えており、新たな価値や答えを生み出すことが求められています。既に様々な分野において多様な答えが生まれていますが、その方向性はいずれも「人々の幸せ」にあります。
子どもたちには、自身の持ち味を発揮できる分野を見付け、強い願いを持って追求することを大切にしてほしいと願います。時に、困難にも出会うでしょうが、願いの強さはそれを乗り越える力となり、求めるものへと歩み続けられると信じています。一つのことに没頭できる幸せは、それにつながる人々への幸せとなり、感謝の思いは自身の幸せをより大きくしてくれるでしょう。子どもたちが、これからの社会を形成する喜びを味わえる人へと育つことを心から願っています。