文化 ふるさとの文化財

◆第8回 伝承

近年、人口減少や生活様式の変化などを背景に、地域の貴重な文化財や祭りなどが失われつつあります。市では、有形・無形の文化財をまちづくりに生かし、地域社会総がかりで文化財を継承していく一環として、文化財保存活用地域計画を作成します。6人の文化財保護審議委員が、身近な文化財を紹介します。

【古老が話す終戦間際の白須賀地区】
第2次世界大戦が終結して80年を迎えます。市内でも戦争の爪痕を見ることができます。その中で、白須賀地区ではどんな戦争体験をしていたのかを古老(95歳)から聞くことができました。昭和19年9月15日に白須賀に隣接する新居地区南に「浜名海兵団」が設置されました。また陸軍も蔵法寺(ぞうぼうじ)や白須賀中学校に駐留していたようです。古老が覚えている軍隊の取り組みは、防空壕(ごう)掘りです。白須賀中学校運動場の北側、元町東の山中、新町地区北部の山中池(ため池)付近で若い兵隊が掘り出した土砂を、勤労奉仕に数日駆り出された地域住民がもっこで運び出す作業を行いました。しかし、昭和20年8月に終戦を迎えますので、戦況はかなり悪化していたのでしょう。

【歴史をかえりみる】
戦時中の白須賀地区民は貧しいながらも、田畑で米や野菜をつくり、米飯を食べ、地引き網で魚を捕っていましたが、疎開していた人も多く、生活は楽ではなかったといいます。また、浜松の航空団の軍人が、地引き網の船を借り受け、獲った魚を煮干しにして持ち帰っていたということもあったそうです。海岸で塩をつくって長野県まで持っていったという話も聞けました。警戒・空襲警報が頻繁に出されるたびに命の危険を感じながら防空壕や松林などに逃げ込んで生活していたそうです。また、戦地に召集されて命を落とされた人がたくさんいらっしゃったことも忘れてはいけないことです。こうした伝承も大切な歴史の記録、文化財なのです。

(片山愛司)

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※二次元コードは本紙10ページをご覧ください

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